夏休み。ドライブの最中の急なパンクやエンジンストラブルは、大いに焦るものだ。そこで修理業者を呼ぼうと、スマホでロードサービスを検索すると――。
あったー! 「基本料金2500円から」。安さにひかれて来てもらうと、なんと十数万円もの、トンデモ料金を請求されるという被害が急増している。
そこで、国民生活センターは2023年7月19日、「インターネットで依頼したロードサービスのトラブル急増―20歳代や学生は特に注意を!」と注意を呼びかける調査を発表した。
悪質業者にだまされない、4つの対策がコレだ。
「Z世代」の被害ダントツ、スマホ検索が得意な点が仇に
国民生活センターによると、自動車やバイクの故障など、インターネットで検索したロードサービス業者をめぐる被害は近年急増している。2018年には全国で43件だったのが2022年には773件と、5年間で18倍に増えた【図表】。
被害にあう人の4割以上が、いわゆるZ世代の10歳代~20歳代の若者で、男性が女性の3倍以上だ。デジタル・ネイティブ世代として、スマホ操作に長けており、故障現場ですぐにインターネットで検索、ロードサービスを呼んでしまうことが、結果的に仇になっているようだ。
こんな事例が多い。
【事例1】事前説明にはない「緊急対応費」や「祝日対応費」を上乗せ
外出しようとすると、自宅に停めていた自動車のエンジンがかからなかった。自動車保険にロードサービスが付帯しているが、サービス範囲外だと思い、ネットで見つけた「基本料金3480円」のロードサービス業者に電話した。費用は自動車を見ないと分からないだろうと思い、こちらからは確認しなかった。
業者は自動車を見て「バッテリーかな。基本料金は3500円で、バッテリーテスター作業が8000円」と言った。作業をしてもらうと、「バッテリーが上がっている。低電圧で充電するなら1万6000円だが、これで直らなければ高電圧となり3万円となる。合計4万6000円になるので、最初から高電圧を勧める」と言うので、高電圧で頼んだ。
作業後、「お盆なので特別料金が加算される。緊急対応費や祝日対応費、消費税を足して合計約7万円」と言われた。「高すぎる」と言うと、少し値引きして6万5000円になった。仕方なく支払ったが、こんな高額になるとは思わなかった。(2022年8月・30歳代女性)
10分間のバッテリー充電だけで、5万円超!
【事例2】一番安い業者に電話したら、「2480円」が「5万円超」
外出先のコインパーキングで自動車のバッテリーが上がってしまった。ネットでロードサービス業者を検索し、「バッテリー上がり 基本料金2480円」と表示されていたサイトが一番安かったので、業者に電話で作業を要請した。
業者は到着後、メニュー表を提示した。基本料金のほかに作業別の料金が表示されていたが、具体的な料金の説明はなかった。約10分の作業時間でバッテリー上がりは解消したが、請求された料金は5万円超だった。サイトの表示料金とあまりにも違うので納得できなかったが、外出先だったこともあり、やむを得ずクレジットカードで決済した。
契約書は交付されず、料金の内訳表示のある請求書兼領収書が交付されただけ。後日、相場よりも高額な料金と分かった。納得できない。(2022年11月・20歳代女性)
【事例3】広告では「納得できなければキャンセル可」なのに、キャンセル料が9000円
外出先で自動車が脱輪し、ネットで見つけたロードサービス業者に連絡した。広告では「現場見積もり後、納得できなければキャンセル可」と書かれていた。業者が到着し、「5万5000円」と言われた。高額すぎると思い、キャンセルする旨を伝えると、約9000円のキャンセル料を請求された。
支払わないと帰らない状況だったため、やむなくキャンセル料を支払った。後ほど業者のサイトを改めて確認したが、キャンセル料が必要なことは書かれていなかった。キャンセル料を返金してほしい。なお、脱輪は別のロードサービス業者に依頼し、1万5000円で対応してもらった。(2023年3月・40歳代男性)
【事例4】費用を損保に請求できると言われて契約したが、認められなかった
自動車がパンクしたため、契約している損害保険会社に連絡したが、つながらなかった。スマホで検索し、「タイヤパンク3000円から」と表示されたロードサービス業者に連絡した。現場の見積りで「1万5000円」と言われ、自動車保険に加入していると伝えると、「保険金が出るから請求するように」と言われた。
作業後、レッカー移動とタイヤ購入、交換で15万円を請求され、高いと思ったがやむなく現金で支払った。保険金が出るものと思っていたが、損害保険会社からは「全額は支払えない。2万円程度しか出せない」と言われた。(2023年3月・30歳代男性)
【事例5】ガス欠だったのに、「バッテリーを購入しろ」とウソをつかれた
自動車で息子がコンビニに立ち寄った際、エンジンがかからなくなった。どうしたらよいのかわからず、ネットを検索したロードサービス業者に来てもらった。息子はガス欠の可能性もあると思ったようだが、業者に「バッテリーを確認する」と言われ、いろいろ試したが動かず、バッテリーを購入するよう言われた。
その時点で息子が(親である相談者に)電話してきたので、断るよう伝えた。バッテリーは購入しなかったが、業者に6万円を請求され、息子は支払ってしまった。
自動車保険にロードサービスが付帯されているので、そのサービスを利用して別の業者に現場に来てもらい、原因を調べてもらうと、バッテリーには問題がなく、ガス欠だったことが判明した。騙されたような感じだ。(2023年1月・20歳代男性)
納得できない場合は、その場での支払いはきっぱり断る
国民生活センターでは、こうアドバイスしている。
(1)修理を急ぐあまり、あわててネットで検索し、ロードサービス業者に依頼すると、焦って冷静な判断ができない場合が多い。自動車保険にはロードサービスが付帯しているケースが多いので、日頃から契約している自動車保険の内容をよく確認しておく。
損害保険会社に電話がつながらなかった場合でも、焦らず、少し時間をおいてから連絡しよう。
(2)自動車の故障の状況や内容はさまざまなので、業者のサイトに「基本料金〇〇円」「○○作業料、△△円から」などと表示されていても、鵜呑みにしないこと。
「緊急対応費」や「祝日対応費」などを請求するケースもある。契約内容や料金について事前に必ず確認する。また、現場に来てもらう時は、キャンセル時にキャンセル料が発生するのか、あらかじめ確認する。
(3)請求された金額や作業内容に納得できない場合は、後日納得した金額で支払う意思があることを示しつつ、その場での支払いはきっぱり断る。業者の態度に身の危険を感じたら、警察に連絡することも一法だ。
(4)見積もりのために呼んだ業者とその場で契約した場合、サイトなどの表示額と実際の請求額が大きく異なる場合などは、特定商取引法の訪問販売によるクーリング・オフ(一定期間、無条件で契約を解除できる仕組み)が適用できる可能性がある。
また、トラブルになった場合は、すぐに最寄りの消費生活センター(電話番号「188」いやや!)に連絡しよう。
(福田和郎)