「青い鳥」惜しむ声! ツイッターロゴが突然「X」になって騒然 海外メディアが指摘する「億万長者はなぜ、ブランド再生が苦手なのか」(井津川倫子)

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   青い鳥が消えた! イーロン・マスク氏による買収後、ソーシャルメディア「ツイッター」をめぐりさまざまな騒動が起きていましたが、とうとうロゴマークが変更されることが明らかになり、波紋を広げています。

   新しいロゴマークは「X」で、すでにマスク氏のツイッターアイコンは「X」に切り替わっています。ツイッターといえば、くちばしが少し開いて、何かをささやいているように見える青色の「ツイッターバード」が長年ブランドの象徴でした。

   世界で最も有名な鳥と称されてきた「青い鳥」の消滅を、各国メディアも嘆き悲しんでいるようです。なかには、マスク氏の宿敵マーク・ザッカーバーグ氏がほくそえんでいる、と推測する記事も...。

   幸せの青い鳥はどこに飛んでいってしまったのでしょうか。

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海外メディアも悲観ムード「マスク氏が青い鳥を全滅させた!」「青い鳥が飛び去ってしまった!」

   2022年10月にアメリカの実業家イーロン・マスク氏がツイッター社を買収して以来、大規模なリストラや突然の仕様変更など、毎週のように何かしらの「騒動」を引き起こしてきました。

   今回の「青い鳥騒動」は一連の騒動に終止符を打つのか、それとも新たな火種となるのでしょうか。各国メディアがトップニュース扱いで、「ツイッターロゴ」に関する記事を配信していることからも、関心度の高さがうかがえます。

Twitter rebrands as X and kills off blue bird logo
(ツイッターが「X」として生まれ変わり、青い鳥のロゴを全滅させた:英BBC放送)
rebrand:ブランドを再生する、リブランド
Kill off:全滅させる、大量に殺す、駆除する

Twitter blue bird has flown as Musk says X logo is here
(マスク氏が「X」ロゴを導入。ツイッターの青い鳥が飛び去った:ロイター通信社)

   新しいロゴは、黒の背景に白抜きで「X」の文字が浮かび上がるデザインで、ほのぼのとしたイメージの「青い鳥」とは真逆のクールな印象です。

   マスク氏の企業「X社」に合わせたイメージチェンジだと報じられていますが、果たして、このブランド再生策は吉と出るのでしょうか。

   英BBCやロイター通信は、「kill off」(全滅する)、「has flown」(飛び去った)のように、旧ツイッターロゴの「青い鳥」を生き物のように扱うことで親近感を示しています。単なるロゴマークではなく、私たちの仲間として生活に浸透し、共存していたことを伝えようとする工夫でしょう。

   ツイッターの「青い鳥」は、2006年にイギリスのグラフィックデザイナーが約15ドル(約2000円)で、ネット販売でツイッター社に売ったとされています。その後、2回のデザイン変更を経て直近の姿に落ち着いたそうですが、一貫して「青い鳥」はツイッターのシンボルでした。

   そもそも、英語の「tweet」が「鳥がさえずる」という意味だったことから、「青い鳥」ロゴとの相性はバッチリ!「tweet」という単語自体が、「ツイートする」「投稿する」といったツイッター関連の意味で使われるようになっているほどです。

   マーケティングの専門家によると、「ツイートする」のように、サービス名や社名が動詞になるケースは、世界的に見てもかなりレアだそうです。

   私たちは、マクドナルドでハンバーガーを食べることを「マックする」と言ったり、スタバでひと休憩する時に「スタバしようか」と誘ったりすることがありますが、「ツイートする」のように一般的に広がっているわけではありません。

   「青い鳥」がすっかり世の中に浸透していたからでしょうか、これまでのところ、驚くほどにロゴ変更を擁護する記事は見当たりません。逆に、「青い鳥」の引退を嘆く声や、マスク氏のリブランド策を批判する声が目立つばかりです。

   数々のブランド再生を手掛けてきた米国人専門家は、「通常、リブランドはじっくり考えてから実行するものだ」と、暗にマスク氏の手法を批判しつつ、今回の「X」へのリブランドは「bit cold and impersonal」(ちょっと冷たくて非人間的な印象を与える)とチクリ。さらに、「ツイッターユーザとして、すでに青い小鳥が恋しいよ」と心のうちを明かしていました。

   また、新しいロゴ「X」をめぐっては、すでに多くの企業が商標登録していることや、ユーザーから猛烈な反発が起きていることから、この先、いばらの道が待ち構えていることは間違いないでしょう。

   「青い鳥騒動」の当事者であるマスク氏は、「the replacement should have been done a long time ago」(もっと早くロゴを変えるべきだった)」と強がっているようです。が、「X」と引き換えに失ったものは、想像以上に多いはず。あれもこれも手に入れようとするあまり、目の前の「青い鳥」を逃がしてしまったのかもしれません。

億万長者はリブランドが苦手? 米IT系メディア「一番喜んでいるのはザッカーバーグ氏だ」?

   それにしても、長年にわたって築き上げてきたブランドイメージを、こんなにもたやすく手放してしまうマスク氏。買収後のトラブル続きで、ガタ落ちになった企業イメージを挽回するための策だと評するメディアもありますが、今のところ、成功には至っていない様子。

   米国のIT系のメディアは、「今回のツイッターロゴ変更を一番喜んでいるのはマーク・ザッカーバーグ氏だ」と、皮肉たっぷり。2021年10月にザッカーバーグ氏が「フェイスブック」を「Meta(メタ)」に変更しましたが、これまでのところ、ブランド再生はうまくいっていないと指摘。マスク氏のロゴ変更騒動が、ザッカーバーグ氏の失敗を目立たないようにしてくれた、と分析しています。

   たしかに、「Meta」よりも「フェイスブック」の方が、そして「X」よりも「ツイッター」の方がより身近に感じますし、人々の生活に入り込んでいる印象です。

   ザッカーバーグ氏もマスク氏も、「フェイスブック」の社名や「青い鳥」のロゴを変更した背景には、VRやARの導入を促す「メタバース構想」や、他事業との親和性を追求する「X構想」があるようですが、人々の行動は、なかなか計算通りに変えられるものではありません。

   記事が指摘するように、誰もがVRゴーグルをつけて生活したいと思っているわけではなく、そのあたりの「民意」を読み間違えると、ブランド再生はうまくいかないものです。

   億万長者になって、宇宙やメタバースなど大きな世界を描こうとすればするほど、「民意」が見えなくなってしまうものでしょうか。「ツイッター」も「フェイスブック」も、一人ひとりのユーザーの集合体です。

   名もないユーザーの声に耳を傾けることがブランドが生き残る秘訣だと、それが「のれん」につながるのだと、ブランド論の基本を学んだ気がします。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「rebrand」(ブランドを再生する)を使った表現を紹介します。

Dunkin' Donuts rebranded as Dunkin' in 2019.
(2019年に「ダンキンドーナツ」は「ダンキン」としてブランド再生した)

Our next step is to rebrand the product and reach a larger market.
(我々の次のステップは製品をリブランドして、より大きな市場にリーチすることだ)

It's time for a complete rebrand.
(徹底的にブランドを再生する時期です)

   日本には「のれん」という考え方がありますが、人々に認知される「ブランド」を築くことは一朝一夕でできることではありません。マスク氏もザッカーバーグ氏も、新しいブランドを浸透させる難しさにこれから直面するのでしょうか。世の中には、お金で解決できないことがあるのだと、改めて認知しました。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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