人手不足を背景にした労働力の定着や優秀な人材の確保のため、上場企業を中心に大幅な賃上げに動くなか、2022年度の上場企業の平均給与は「638万円」で、過去20年で最高額となったと、帝国データバンクが2023年7月25日に発表した。
上場企業の、じつに4社に1社が 30万円以上アップしたという。
また、国内企業の平均給与額は443万円で、上場企業はそれより約200万円も高い水準だった。「格差」がより鮮明になり、賃上げが難しい企業では人材の確保に支障が出てくる可能性がある。
上場企業の平均年間給与額、2022年度に638万円
帝国データバンクが2023年1月、全国約1万社を対象に行った調査では、今年度にベースアップや一時金の引き上げを含めた「賃上げ」の意向を表明した企業は過去最高水準だった。
人手不足などを背景に「労働力の定着・確保」目的の賃上げが、約7割を占めた。そのほか、従業員の生活支援や物価高騰の影響を受けたものも多かった。
上場企業でも優秀な人材の確保は容易でないとみられるなか、賃金の引き上げなどの処遇改善が難しい企業では、「必要な社員を確保できない可能性がある」(帝国データバンク)。
足元では、業績好調な企業、業界を中心に初任給などの給与テーブルの大幅な引き上げや、パート・アルバイトも含めた時給の引き上げに動く企業も出ている。そのため、待遇改善で人材を確保する傾向が強まっている。
上場企業の給与水準は、日本国内の平均給与額をすでに大きく上回っているものの、今年度もさらなる上昇が予想される。
上場企業で「賃上げ」の動きが目立つなか、2022年度決算期(22年4月~23年3月期)における上場約3800社の平均年間給与(平均給与額)は638万円だった。
21年度の624万円より14万円(2.2%)多く、2年連続で前年と比べて増えたほか、平均給与額・増加額ともに過去20年間で最高だった。
また、国内の平均給与額は443万円で、それより約200万円高い水準だった。
2021~22年度の増減を比べると、前年度から平均給与額が「増加」した上場企業は68.9%を占めた。21年度時点の66.7%から拡大。上場企業でも賃上げの動きが広がった。【図1参照】
特に、前年度から「30万円以上」増加した割合は25.3%と、全上場企業の4社に1社で、大幅な賃上げとなったほか、比較可能な2004年度以降で最も高かった。
輸出企業を中心に、円安の追い風を受けて好業績となった企業が多かった。また、物価高や人手不足を背景とした賃上げ機運が22年度以降、急速に高まったことを背景に、近年、上場企業の平均給与額は上昇傾向にある。