米国の利上げは最終局面なのか? 9月の次回FOMCが正念場、FRBは慎重姿勢崩さず

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   【米国経済の動向】FRB(米連邦準備理事会)は2023年7月26日、FOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げを決定、政策金利のFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、5.25~5.50%とした。

市場では「今回の利上げで打ち止め」との見方が強まるが...?

   FRBはインフレを抑制するため、2022年3月から利上げに踏み切り、2022年中に7回連続、2023年も今回を合わせて4回の合計11回の利上げを行った。その結果、政策金利のFF金利は、22年ぶりの高水準まで引き上げられた。

   一方、FOMC後の記者会見で、FRBのパウエル議長が「データ(経済指標の結果)次第では、9月の次回会合で金利を据え置くことを選択する可能性もある」と発言したことで、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は上昇し、過去最高の13営業日連騰と並んだ。

   米国の労働省が7月12日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%の上昇となった。これは、5月の4.0%上昇から大幅に減速で、上昇率は12か月連続で前月を下回り、インフレの低下傾向が示されていた。このため、市場では利上げ打ち止め観測が強まっていた。

   市場では、FOMCが0.25%の利上げを決定したことで、「今回の利上げで打ち止め」との見方が強まっている。たしかに、米国の消費者物価指数(CPI)が2022年6月に前年同月比9.1%まで上昇したことを考えれば、急速にインフレは収まっているように見える。

   日本の6月消費者物価指数(CPI)は同3.3%の上昇だったので、米国の消費者物価指数はすでに日本を下回っている。

物価の状況次第では、利上げの可能性か 日米の金利差拡大の行方は?

   だが、6月のFOMCで公表されたドットチャート(経済見通し)では、参加者の2023年末の政策金利予想の中央値が、ドットチャートが前回公表された3月の5.1%から5.6%に引き上げられ、0.25%の利上げを年内にあと2回実施することが示唆された。

   FRBはインフレを2%にすることを目標としている。パウエルFRB議長もFOMCのあとの記者会見で、6月の消費者物価が前年同月比3.0%の上昇にとどまったことに関して、「1つのデータにすぎず、もっとデータをみる必要がある」と述べている。

   さらに、同議長は、今回の利上げに続き、次回の9月FOMCでも、「データで裏付けられれば、9月の政策決定会合で利上げを行う可能性は確かにある」とした。

   このため、7月のFOMCで「利上げは打ち止め」との見方は時期尚早だろう。物価の状況次第では、FRBは再び9月のFOMCで利上げを実施する可能性は高い。

   ただ、いずれにしても、米国の利上げが最終局面に差し掛かっているのは確か。その半面、いずれは日本銀行が大規模金融緩和策の変更から利上げへと進むことを考えれば、日米の金利差拡大も最終局面を迎えており、為替市場のドル高・円安の動きには歯止めが掛かることになりそうだ。

   米国の利上げが継続されるのか、終了するのかは、9月のFOMCが正念場となりそうだ。夏場の消費者物価動向など、今後の米国の経済指標の結果が重要な意味を持つことになるだろう。(鷲尾香一)



【プロフィール】
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト


元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。

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