【物流の2024年問題】トラックドライバーの待遇改善なるか? 国交省、「トラックGメン」新設...岸田政権「肝煎り政策」、問われる真価

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   国土交通省は運送業者と荷主の取引を監視する「トラックGメン」を2023年7月21日に新設した。トラックドライバーに長時間の荷待ちや運賃の不当な据え置きなど強いる荷主業者を監視し、是正を求めるというが、一体どんなものなのか。

  • 「物流の2024年問題」解消につながるか(写真はイメージ)
    「物流の2024年問題」解消につながるか(写真はイメージ)
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162人体制でスタートした「トラックGメン」、荷主業者らの監視に当たる

「トラックドライバーは他の産業と比較して労働時間が長く、低賃金にあることから、担い手不足が課題だ。荷主や元請事業者の理解と協力の下、荷待ち時間の削減や適正な運賃を収受できる環境を整備することが重要だ」

   斉藤鉄夫国土交通相は2023年7月18日の閣議後会見で、こう述べて、「トラックGメン」を新設する考えを明らかにした。

   トラックGメンは国交省自動車局の職員82人のほか、新たに80人の職員を「緊急に増員」し、合計162人体制でスタートした。国交省本省と地方運輸局・支局に常駐し、荷主業者らの監視に当たるという。

   国交省によると、トラック事業者にヒアリングなどを行い、集めた情報に基づき、荷主を調査する。そのうえで必要な場合は改善を要請し、悪質な場合は是正を勧告するほか、荷主業者を公表するという。

   従来は「情報が届いたものに対応するだけだったが、トラックGメンが関係省庁や産業界と緊密に連携してプッシュ型で情報収集し、どんどん対応する」(国交省自動車局)というから、荷主業者にはプレッシャーに違いない。

長時間の荷待ち、運賃据え置き、過積載運行の要求...荷主事業者の違反行為は解消される?

   この背景には、トラックドライバーの残業規制強化で、物流業界の人手不足が予想される「2024年問題」があるのはいうまでもない。

   トラックドライバーは労働時間が長く、低賃金であることが担い手不足につながっており、これらの問題の解決が喫緊の課題となっている。

   深夜の東名高速道路を東京から名古屋方面に向かうと、大型トラックが数珠つなぎで走っているのを見かける。大手宅配業者をはじめとする長距離トラックで、トラックドライバーが日本の物流を支えていることを実感する。

   国交省によると、そんなトラックドライバーには、長時間の荷待ち、依頼になかった付帯業務、運賃の不当な据え置き、過積載運行の要求、無理な配送依頼など荷主業者の違反行為が目立つという。

   トラック業界はコロナ禍による需要減退や、円安と原油価格上昇に伴う燃料代の高騰で、経営状況は厳しさを増している。トラックドライバーの負担軽減と適正な運賃の確保は、日本の物流を維持するうえで不可欠となっている。

   国交省はこれまでも貨物自動車運送事業法に基づき、荷主事業者らに改善を求めてきたが、これらの問題は十分に解消されなかった経緯がある。

   トラックGメンの新設は、2024年問題の解消に向けた岸田政権肝煎りの政策。24年4月のドライバーの残業規制強化の実施まで1年を切り、「時間切れ」が迫るなか、さっそく真価が問われることになる。(ジャーナリスト 岩城諒)

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