注目業界の未来シナリオ
「週刊ダイヤモンド」(2023年7月29日号)の特集は「5年後の業界地図」。生成AIの急発展やインフレなどの動向を踏まえ、注目業界の未来シナリオを分析。「5年後」の産業界を展望している。
半導体企業は、ChatGPTをはじめとした生成AIブームの恩恵を最前線で受けている。なかでもGPU(画像処理半導体)開発で競合を引き離す米国のエヌビディアが注目されている。5月には半導体企業として初めて時価総額1兆ドルの大台に乗せた。
日系企業では、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコなどのほか、ウシオ電機、アルバックが大化け候補として挙げられている。
自動車業界は内燃機関から電気やモーターへとシフトする大変革の時代を迎えている。最大の業界リスクは米国、欧州、中国における規制の動向だという。
トヨタ自動車は、2026年をピークに伸び悩む見通し、と指摘。日本勢はEV(電気自動車)競争の初期は惨敗の様相だが、仕込みが奏功すれば、30年ごろから再び挽回するシナリオもあるのでは、と見ている。
三菱商事と三井物産の純利益が1兆円を突破するなど、2023年3月期の総合商社は空前の好業績だった。資源バブルの恩恵を受けたためだが、今後も利益は高水準だと予測している。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事が3強を形成すると見ている。
◆電子部品業界にもAIブームの追い風
電子部品業界にもAIブームの追い風が吹いている。
特に直接的な恩恵を受けそうなのが、イビデンと新光電気工業だという。両社とも半導体のIC(集積回路)とマザーボードをつなぐ半導体パッケージ基盤に強みを持つからだ。
このほか、村田製作所、ニデック、TDK、ロームも順調に業績を伸ばし、特に村田製作所は5年後に営業利益を8割増と予想している。
鉄鋼業界では、大口の最終需要先である自動車業界のEVシフトが進むと、エンジンの中学部品となるクランクシャフトや、自動車向け特殊鋼などの需要減が避けられない。
国内市場だけではジリ貧なので、海外戦略が重要となる。国内最大手の日本製鉄はインド事業を拡大するなど、海外展開を進める。
もう1つ、見逃せないのが「脱炭素」の動きだ。二酸化炭素排出量が数分の1になる「電炉」メーカーの東京製鐵、大和工業に注目している。
第2特集の「社外取締役ランキング」では、上場3900社を対象にしたランキングで、上位200人の実名と得点を紹介している。
1位となったのは菅原郁郎氏(66)。元経済産業省事務次官で、トヨタ自動車、日立製作所、富士フィルムホールディングスの社外取締役を兼ねる。推定報酬額の合計は9930万円。トップ10のうち、女性が6人を占めたのも注目だ。