「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
企業で活用が進む「ChatGPT」
2023年7月24日発売の「週刊東洋経済」(2023年7月29日号)の特集は「ChatGPT 超・仕事術革命」。生成AI(人工知能)ChatGPTは、個人での利用から、企業での活用へと進んでいる現状をリポートしている。
ソフトバンクグループの事業会社では5月から、約2万人の全従業員が社内環境で生成AIを使えるようになった。また、メガバンク3行はすでに生成AIの利用環境を導入した。
一方、活用に二の足を踏む企業の懸念は、セキュリティーだ。ChatGPTをデフォルト設定のまま使えば、入力情報の漏洩リスクがあるという。
NECジェネレーティブAIハブリーダーの千葉雄樹氏の、「生成AIの法人利用は、企業が対価を払い、安全な通信経路かつ学習データに使われない設定で社内システムに導入するのが基本になってきた」という言葉を紹介している。
パート2では、生成AIの活用にあらゆる業界・企業が乗り出した事例を取り上げている。
たとえば三菱UFJ銀行では、5月から一部の行員が稟議書作成や、行内手続きの照会などにChatGPTを使っている。機密情報を扱うため、安全性への懸念が壁だったが、3月に米マイクロソフトの法人向けクラウドサービスがChatGPTに対応したことで道が開けたという。
検証した行員の6割が効果を感じているのが、業務手続きの照会機能だ。
マニュアル化されたさまざまな行内手続きを覚えるのは困難だが、対話型AIによって平易に確認できるようにする。活用できる業務を順次拡大していく計画だという。年内には約3万人の全行員がChatGPTを使えるようにする方針だ。
◆新薬の開発に生成AIが革命を起こす?
製薬業界では新薬の開発に生成AIが革命を起こすかもしれない、と期待されている。今年6月、生成AIを用いて発見・設計された初の医薬品が、臨床試験で初めて人に投与されたという。
米国のバイオベンチャー、インシリコ・メディシン社が開発する特発性肺線維症の治療薬候補だ。AIは人に比べ圧倒的に多くの論文を読むことができるため、開発の時間短縮や、試験成功確率を高める可能性を秘めている。
アステラス製薬や第一三共、小野薬品などの5社は、三井物産が提供する米エヌビディアの創薬支援向けスーパーコンピューター「Tokyo-1」を活用するイニシアチブへの参画を表明。
このイニシアチブでは、創薬に特化したLLM(大規模言語モデル)を学習させたり、潜在的な薬の新しい分子構造をAIで生成したり、シミュレーションするうえでの支援が受けられるという。
製造業でも活用の余地があるという。
日立製作所では5月に新たな社内組織をつくり、生成AIを導入するうえでの支援を始めた。メタバース空間での鉄道保守への応用に生成AIが活用できるのでは、と期待されている。鉄道車両のシミュレーションも可能で、デザインや設計にも活用できるという。
マーケティングの分野でもChatGPTの活用が進みそうだ。
DMMグループでは、チャットボットサービスを展開するうえでの市場調査・分析にChatGPTの導入を試みている。EC企業から委託を受けて運用するチャットボットのマーケティング面の調査にChatGPTを活用。業務時間を5割ぐらい減少しているという。
いち早くChatGPTを先行導入した企業が得た手応えもまとめている。
パナソニック コネクトでは、導入から5カ月。プログラミングの業務ではコードを書く前に行う調査に3時間かかっていたのが、5分に短縮するなど、生産性向上に大きな効果があったという。
同誌がまとめた、管理職のための「社内導入マニュアル」も参考になりそうだ。
どのような生成AIサービスを利用するか、誰が利用するか、何のために利用するか、どのように利用するかのポイントを挙げたうえで、自分の職場の状況を見極めるのが大切なようだ。