国交省、金融庁が調査へ...悪質さが確認されれば、行政処分も 顧客による金銭補償を求める動きも加速か
7月上旬に不正が報じられて以降、ビッグモーターは7月18日、ホームページで不正を認めて陳謝し、兼重社長が報酬全額を1年間、返上すると発表した。だが、同社が心から反省しているとはとても思えない事実が次々に明らかになっていた。
損保関係者によると、ビッグモーターは特別委から報告書を受け取っておきながら、しばらく損保側に報告書の一部しか渡さなかった。損保側が激怒し、渋々、全文を提出したという。
業界には「今回も沈黙作戦でやり過ごす腹だろう」と冷めた見方もあったが、今回ばかりは、ビッグモーター、そして兼重氏の思惑通りに進まなかった。
一つは国の動きだ。
斉藤鉄夫国交相は同社が道路運送車両法に違反した疑いがあるとして、行政処分を視野に調査に乗り出すと明言。悪質さが確認されれば、立ち入り検査も検討、その結果次第で行政処分も視野に入れている。
「本当にこんなことがあるのかと我が目を疑う状況だ」と激怒したのは鈴木俊一金融相だ。ビッグモーターは保険代理店としても登録している。これをてこに、金融庁としても調査に入る方針だ。
内外からの突き上げも激しい。
同社は不正発覚後もしばらく「車を売るならビッグモーター」のキャッチフレーズで知られるCMを流し続けてきた。しかし、出演していた俳優も出演契約を解除し、CMは放送中止を余儀なくされた。
メディアではCMが消える一方、新聞のほかにもテレビのニュース番組やワイドショーで、同社の現役社員や勤務経験者による「告発」が相次いでいる。どれも同社や経営陣の悪質性を糾弾するものばかりだ。
損保各社はすでに不正請求した保険金の返還を求めている。今後は車両を故意に傷つけられるなどした顧客による金銭補償などを求める動きも加速しそうだ。
和泉新社長のもとで事態の収拾を図り、経営立て直しに取り組むことになるが、「販売台数、買い取り台数に関しては約半減しておるのが事実」(和泉氏)という厳しい局面にあり、先行きを見通せない状況だ。(ジャーナリスト 白井俊郎)