化けの皮はがれた「ビッグモーター」 得意の沈黙戦略通じず...兼重社長ついに辞任

   中古車販売大手ビッグモーター(東京)が大炎上し、創業者である兼重宏行社長が2023年7月25日、ついに辞任表明に追い込まれた。

   これまでは社内の不祥事などが明らかになっても沈黙を貫き、事態が収まるのをじっと待つ戦略で切り抜けてきたが、今回はそうはいかなかった。

   新体制で立て直しに取り組むことになるが、明らかになっている不正のひどさは、数々の企業不祥事の中でも際立っており、再建の道のりは容易ではない。

故意にキズをつけて修理費用を水増し、損保会社に過大請求 靴下にゴルフボールを入れてぶつける悪質な手口も

   炎上の舞台となったのは主力である中古車の販売、買い取り部門ではなく、事故車両の修理や車検などを行う整備部門だ。ビッグモーターが全国30か所に展開する整備工場は、損害保険会社の提携工場ともなっている。

   同社は損保会社からあっせんされた事故車両などを修理する際、故意にキズをつけたり、必要のない部品交換を行ったりして修理費用を水増し。これを損保会社に過大請求して多額の保険金を不正受給していたことがバレたのだ。

   不正が明らかになったのは2022年、損保側に内部通報が寄せられたことがきっかけ。損保各社から確認を求められたビッグモーターは当初、「現場の経験不足が原因」などと言い逃れしていた。しかし、納得は得られず、弁護士による特別調査委員会を設けることを余儀なくされ、特別委が調査を進めていた。

   2023年6月26日付で調査報告がまとまり、問題が火を噴いた。

   その水増しの手口は悪質そのものだ。

   ヘッドライトのカバーを割ったり、ドライバーで傷つけたり。サンドペーパーで車体をこすり、擦り傷に見せかける工作もしていた。

   極めつけは、ゴルフボールを使った水増しの手法だ。靴下にゴルフボールを入れ、それを振り回して車体にぶつける荒っぽさ。雹害(ひょうがい)でぼこぼこになった車体のキズをさらに広げることが目的だったという。

   特別委が整備員にアンケートを実施したところ、回答者の3割近くが「不正な作業に関与した」と告白。不正のうわさを見聞きしていた人も加えれば、全体の半数近くがかかわっていたことが判明した。これでは組織的と言われても仕方がないだろう。

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