iPhone対ブラックベリーの場合 ポジショニングの重要性
〇「ポケットというポジション iPhone対ブラックベリー」
アップルのiPhoneが登場する以前、RIM社のブラックベリーは、スマートフォンの主役だった。フルキーボードがついていて、安定したEメールの送受信ができた。
一方、iPhoneにキーボードがないことは強みだったという。ガラスのタッチスクリーンは、すべてのアプリに応じられるよう、ユーザーインターフェースをカスタマイズできるということだった。
iPhoneがブラックベリーに勝利した要因の1つは、ブラックベリーがモバイルデータ通信の速度の発達に対応できなかったことだという。iPhoneの利用者は、音楽、Eメール、地図、天気予報、メッセージ、電話など、使いたいものがすべて境目なく統合されていることに満足感を得た。「iPhoneがあればすべて手のひらのうえで使えるからだ」。ポジショニングの重要性を説いている。
RIMには2人のCEOがいて、内輪の小競り合いをしたこともアップルには幸いだったという。
日本の企業で取り上げられているのは、任天堂である。「レジリエンス」(=回復力)という第9章に登場。花札から始まった同社の道のりを記述し、新しいアイデアに繰り返し賭けるという、独創的な取り組みを高く評価している。
「夫(そ)れ兵の形は水に象(かたど)る」(「孫子」虚実篇)
不況やパンデミックなど危機を乗り越えるには、レジリエンスのある組織とリーダーが必要だ、と解説している。
日本の経営者の間で、「孫子の兵法」が読まれているとは聞いていたが、世界的にも読まれているというのは驚きだった。ライバルの攻防という形式で書かれているので、わかりやすいし、面白い。ほかにもIBM対ユニバック、H&M対Zaraなど有名企業の対決を取り上げている。(渡辺淳悦)
「ビジネスの兵法 孫子に学ぶ経営の真髄」
デイヴィッド・ブラウン著、月沢李歌子訳
早川書房
2750円(税込)