少数派の所得の高い層が平均額を引き上げているが、平均を下回る世帯は61.6%という実態【日本の姿2:所得・貯蓄・借入金】(鷲尾香一)

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1世帯当たり平均貯蓄額は1368万3000円 1世帯当たり平均借入金額は390万6000円

   貯蓄の状況をみると、全世帯では「貯蓄がある」は82.4%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1368万3000円となっている。なかでも、高齢者世帯の「1世帯当たり平均貯蓄額」は1603万9000円と高い。半面、「貯蓄がない」のは母子世帯の22.5%、次いで、高齢者世帯の11.3%となっており、高齢者世帯での格差が表れている。

   所得の内訳をみると、全世帯では「稼働所得」が73.2%、「公的年金・恩給」が20.1%だが、高齢者世帯では「公的年金・恩給」が62.8%、「稼働所得」が25.2%となっている

   公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のなかで「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は44.0%もある。

   高齢者に関しては、雇用政策が機能しているのは言い難く、年金のみに生活を頼っている層が多い。

   前述した所得金額階級別に世帯数の相対度数分布と同様に、高齢者世帯の貯蓄額の平均が高いのは、少数派の富裕層が平均額を引き上げており、生活保護受給世帯では高齢者世帯が圧倒的に多数にのぼることも勘案すると、おそらく貯蓄額の中央値は非常に低くなるものと推測される。

   一方、借入金の状況では、全世帯では「借入金がある」は24.7%で、「1世帯当たり平均借入金額」は390万6000円。借入金のある割合が最も高いのは、「児童のいる世帯」で55.7%となっており、「1世帯当たり平均借入金額」は1185万1000円となっているが、これは住宅ローンなどの住宅取得資金の借り入れだと思われる。

   これは、世帯主の年齢階級別に1世帯当たり平均貯蓄額の状況をみると、20代では貯蓄額と借入額が同額程度だが、30代が住宅取得時期に当たることから借入額が急増し、貯蓄額は年齢を経るごとに増加する一方で、借入額は減少していくことにも表れている。(グラフ4)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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