日本の家庭は「核家族化」ではなく、「単独化」が進んでいるという実態【日本の姿1:少子高齢化】(鷲尾香一)

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   未来は現在の延長上にある。特に、若い世代にとって現在を理解することは、やがて訪れる未来を予想することにつながる。もしも、予想される未来が望まない方向に向かっているのであれば、変えていく努力が必要だろう。

   厚生労働省は2023年7月4日、「2022年国民生活基礎調査」を公表した。今回は、同調査から現在の日本の姿を2回にわたって見ていく。第1回の今回は、世帯の状況を通じて、「少子高齢化」の現状を取り上げる。

「単独世帯」は1785万2000世帯...全世帯の32.9%を占めて最多

   まずは、世帯の状況を見てみよう。全国の世帯総数は5431万世帯で、世帯構造では、「単独世帯」が1785万2000世帯と全世帯の32.9%を占め、最も多い。「核家族化」が言われて久しい。核家族とは、夫婦のみの世帯、夫婦と未婚の子のみの世帯、ひとり親と未婚の子のみの世帯のいずれかの世帯を指すが、今や日本の家庭は核家族化ではなく、「単独化」している。

   世帯類型を見ると、少子高齢化の状況が鮮明にあらわれている。

   65歳以上の者のいる世帯は2747万4000世帯と、2001年には全世帯の35.8%だったが、2022年には同50.6%と半数を超えている。65歳以上の者のみか、65歳以上の者と18歳未満の未婚者がいる「高齢者世帯」は1693万1000世帯と、2001年の同14.5%から同31.2%に倍増した。一方で、児童のいる世帯は991万7000世帯と、2001年の同28.8%から同20%を割り込み、同18.3%まで低下した。

   単独世帯、65歳以上の者のいる世帯、高齢者世帯はいずれも世帯数、割合とも過去最多となり、児童のいる世帯は世帯数、割合とも過去最少となっている。少子化に歯止めのかかる兆候はまったく見られない。(グラフ1)

児童「1人」世帯が49.3%で「一人っ子」社会に 高齢者の一人暮らしは51.6%...男性18.5%は増加傾向、女性33.0%は減少傾向

   現在の日本にとって、最大の問題は「少子高齢化」の急激な進展だろう。特に、社会保障面では、減少する若い世代が、増加の一途を辿る高齢者世代を支えるという構図になっており、若い世代の負担は増すばかりだ。

   少子化の現状では、児童のいる世帯の平均児童数は2001年には1.75人だったが、2022年には1.66人まで減少している。児童が「1人」いる世帯は488万9000世帯で49.3%、「2人」いる世帯は377万2000世帯で同38.0%、「3人以上」は125万6000世帯で同12.7%となっている。(グラフ2)

   もはや、「ひとりっ子」の比率は世帯の半数に及び、日本は「ひとりっ子」社会となっていると言える。

   ただ、より加速しているのは高齢化だ。

   高齢者世帯は前述の通り、全世帯の31.2%にまで急増しているが、高齢者世帯に占める単独世帯(高齢者の一人暮らし)は2001年の47.8%から2022年には51.6%と50%を超え、高齢者世帯の半数以上が一人暮らしとなっている。

   高齢者の単独世帯の男女別内訳では、男性が18.5%、女性が33.0%だが、男性は2011年の10.9%から増加を続けており、女性は同36.8%から減少を続けている。

   これまでは、平均寿命が男性より、女性が長かったが、ここ数年は男性の平均寿命が延びてきていることのあらわれだろう。(グラフ3)

「高齢者世帯」では61.5%が「要介護者がいる」...20年前と比べ25%近く高まる

   高齢者化、高齢者の増加は、「介護」という深刻な問題を引き起こしている。 要介護者がいる世帯を世帯構造別にみると、「高齢者世帯」では、2001年に35.3%だったのが、2022年には61.5%と、高齢者世帯の6割を超える世帯に要介護者がいる。

   「核家族世帯」でも、2001年の21.3%から2022年には42.1%に、単独世帯でも同15.7%から同30.7%に要介護者のいる世帯の割合が高まっており、高齢者の介護は大きな社会問題になっている。(グラフ4)

   これら要介護者の介護状況をみると、同居者が介護を行っている割合が45.9%、別居者が行っている割合が54.1%となっている。同居の主な介護者では「配偶者」が22.9%で最も多く、次いで「子ども」が16.2%となっている。一方、別居者では、「事業者」が15.7%で最も多く、次いで「別居の家族等」が11.8%の順だ。(グラフ5)

   同居者なのか、別居者や事業者が介護を行うのかは別として、要介護者がいるということは、日常生活に大きな負担となることに違いない。特に、高齢者世帯や核家族の増加によって、いわゆる「老々介護」が増加している。

   要介護者と介護者の年齢の組合せをみると、「60歳以上同士」の割合は2001年の54.4%から77.1%に、「65歳以上同士」は同40.6%から63.5%に、「75歳以上同士」は同18.7%から35.7%と大幅な上昇傾向にあり、深刻な問題となっている。(グラフ6)

   今回は世帯の状況から少子高齢化の進展状況を見た。次回は、所得の状況を通じて、生活感に焦点を当てることにする。【つづく】

   <少数派の所得の高い層が平均額を引き上げているが、平均を下回る世帯は61.6%という実態【日本の姿2:所得・貯蓄・借入金】(鷲尾香一)>に続きます。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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