相手の「心の痛み」を理解するために...大事なのは「コンパッション」という考え方【尾藤克之のオススメ】

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   「おもてなし」はサービスとして捉えるのではなくケアとして考えることで、ビジネスを変化させることができます。いったい、どういう意味でしょうか。本書の著者である佐久間庸和氏は、一条真也のペンネームで著作が100冊以上あるベストセラー作家でもあります。

『コンパッション! Compassion!』(佐久間庸和著) 発行所:オリーブの木、発売:星雲社

コンパッションとは何者か

   コンパッションとは、苦しんでいる人の、苦しみを理解し、助けたい気持ちを抱くこと(行動に移すこと)を意味します。佐久間さんは次のように言います。

「コンパッションは、私たちの幸福や健康に多くのメリットをもたらします。例えば、コンパッションがあると、ストレスや不安を軽減し、免疫力を高め、幸福感を増やすことができます。また、コンパッションは、人間関係を改善し、社会的なつながりを強めることができます」(佐久間さん)
「コンパッションは、私たちがより良い人生を送るために欠かせないものです。コンパッションを持つことで、私たちは、自分自身や他人の苦しみを理解し、共感し、助けることができるようになります。そして、コンパッションによって、私たちは、より幸福で健康な人生を送ることができるのです」(同)

   サービスからケアへの移行。さらに、それらを支えるコンセプトが「コンパッション」という概念だと佐久間さんは言います。

「2023年、わたしが社長を務める株式会社サンレーはおかげさまで創立57周年を迎えますが、これまでの歩みを象徴するようなキーワードに出合いました。『コンパッション』という言葉です。英語の「コンパッション」を直訳すると『思いやり』ですが、思いやりは、『隣人愛』『仁』『慈悲』『利他』『ケア』などにも通じます」(佐久間さん)
「2022年9月24日、わたしは東京の西巣鴨にある大正大学で開催された公開講座に参加しました。宗教学者の島薗進先生の特別講義を受講するためです。わたしは2018年から2022年まで上智大学グリーフケア研究所の客員教授を務めましたが、そのときに同研究所の所長だったのが島薗先生でした」(同)
「先生の特別講義で、初めて『コンパッション都市』というものを知りました。それは、『老、病、死、喪失を受けとめ、支え合うコミュニティ』であり、一言で表現するなら『悲しみをともにする共同体』です。講義を聴きながら、わたしは、コンパッション都市とはまさに互助会が創造すべきコミュニティのモデルだと思いました」(同)

一流の人が大切にしているもの

   また、佐久間さんは「一流」と言われる人には共通点があると言います。会社の中に神社や仏壇をつくり、社員にもおまつりをするよう、指導している人が少なくない、と。

   毎日きちんと仏壇に線香やお水を上げ、仏壇はなくても自分なりのやり方で先人への感謝を表現したりしている人がいます。ご先祖さまという意味で、さまざまな先人への感謝の儀式にも一流の人は敬意を払っているのです。

   キーワードは「伝統」です。あるいは連綿と続く「歴史」を現代に生かすこと、と言っていいかもしれません。長い年月の中で培われた"英知"の一部に、伝統というものがあります。一流の旅館、一流の料亭がありますが、一流の陰には「伝統」というものが常に見え隠れしていると言うのです。

「焼き鳥屋やうなぎ屋でも秘蔵のタレをつぎ足しながら、一方で新しい味を追求している店があります。一流とは、長い時間の中で培われてきた英知を惜しげもなく提供すること。ただし、守っているだけではありません。そこには時代に合わせた創意工夫があります。それができることもまた一流の証しです。これを『革新』といいます」(佐久間さん)

   日本人なら誰もが感じていることなのかもしれません。もし忘れているなら気持ちを新たにしてみましょう。きっと成長するためのヒントが隠されているはずです。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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