不燃ごみやプラスチックごみとして捨てられたモバイルバッテリーなどのリチウムイオンバッテリーによる、ごみ収集車やごみ処理施設などの発火事故。
こうした事故が多発するなか、その被害額が2018年度から21年度の4年間で、およそ111億円にも達することがわかった。独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)がインターネットなどで情報を収集し、2023年6月29日に発表した。
リチウムイオンバッテリーなどを使った製品は押しつぶしたり、破断したりすると発火し、火災につながる恐れがある。事故の多発で、多額の修繕費用が必要となったり、ごみ処理の受け入れが滞ったりと、市民生活に支障をきたす事態が生じている。
NITEは、
「誤った捨て方で事故が起きることを理解するとともに、正しく捨てることで『ごみ捨て火災』を防ぎましょう」
と呼びかけている。
充電式電池が原因の火災、2020年度に1万2765件 「氷山の一角」に過ぎず...
製品評価技術基盤機構(NITE)が、インターネットでの報道や書籍の情報をもとに収集した「ごみ処理過程(ごみ収集車やごみ処理施設)における年度ごとの発火等発生件数と被害額(原因がリチウムイオンバッテリー以外による件数・被害額を含む)」によると、発生件数、被害額ともに増加傾向がみられた。【図1参照】
2021年度の発火等発生件数は1969件で、前年度(1823件)から146件増。また、被害額は約72億円で、前年度の11億円から大きく増えた。
2017年から21年までの発火等発生件数は、5851件で、被害額はおよそ111億円(※1)にのぼった。
また、環境省の報告書(※2、※3)に基づく、ごみ処理過程におけるリチウムイオンバッテリーなどの充電式電池が原因と疑われる火災(※4)の発生件数(【表1】参照)をみると、2020年度は1万2765件で、前年度(9732件)と比べて3033件も増えている。
増加傾向にあるが、前述の【図1】(ごみ処理過程の全体)と比べて件数が多く、NITEが収集した発火等発生件数・被害額は「氷山の一角に過ぎないと考えられる」としている。
捨てるときは「製品回収サービス」の利用を!
ごみ処理過程で発火の原因となった主な製品をみると、154の市区町村が「モバイルバッテリー」をあげて、最も多かった。次いで、81の市区町村があげた「加熱式たばこ」や、72の市区町村の「コードレス掃除機」などが続いた。「スマートフォン」(42の市区長足)は4番目に多かった。【図2参照】
たとえば、2019年12月に東京都で発生したごみ収集車の火災のケースでは、
「電動アシスト自転車のバッテリーパックが本来のごみ収集区分ではない不燃ごみとして捨てられていたため、ごみ収集車内に押し込まれた際に押しつぶされ、バッテリーパック内のリチウムイオンバッテリーが内部ショートして異常発熱し、火災に至った」
と考えられる。
ちなみに、取扱説明書には「リチウムイオンバッテリーは、使用後の回収及び再資源化が義務付けられている。交換時、使用済みのバッテリーパックは、販売店にリサイクルをお願いする」ことが記されている。
また、2022年5月に三重県のごみ処理施設で破砕処理後のモバイルバッテリー付近から出火したケースでは、「破砕処理の外力によってリチウムイオンバッテリーのセルが内部でショートして異常発熱して発火した可能性が考えられる」としながらも、「焼損が著しく、原因の特定はできなかった」という。
NITEは、リチウムイオンバッテリーなどを使用する製品を正しく捨てるよう、
(1)製品本体の表示や取扱説明書などで製品にリチウムイオンバッテリーなどが使用されているか確認する。使用電池の種類について記載がない場合は販売店、メーカーに確認する。
(2)リチウムイオンバッテリーなどが使用されている製品を、分別方法など含め各自治体の指示に従って正しく捨てる。
(3)小型充電式電池のリサイクルを推進する一般社団法人JBRCの会員企業の電池(表面にリサイクルマークの表示があり、破損・変形がないもの)は、協力店または協力自治体に持ち込む。
(4)メーカーや販売店による製品の回収サービスを利用する。
(5)放電してから(電池を使い切ってから)捨てる。
――を、心がけようと呼びかけている。