第2、第3の恒大集団がそこかしこに存在する
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
まず、恒大集団を筆頭にした不動産危機だが、日本経済新聞(7月17日付)「中国恒大の最終赤字、2年で計11兆円 不動産の評価下げ」という記事に付くThink欄の「ひとくち解説コーナー」では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(マクロ経済学)が、
「一般市民が購入できないほどの住宅価格高騰と不動産業者の債務拡大に対応するために、2020年にレッドライン政策をして業者の借り入れを制限した。これにより住宅建設にかかる支払いが困難になったことが、恒大集団の問題の発端だった。それにゼロコロナ対策が状況を悪化させ、不動産業界に波及した」
と指摘。そのうえで中国政府の方針を、
「昨年(2022年)レッドラインの緩和策を発表した。現在は第1・2線都市の価格はいくぶん回復しているが、先延ばしになっていた住宅需要が一巡すると、4月から再び需要は低迷している。新規住宅購入者の金利を引き下げ、開発業者が調達した資材の支払いが円滑に行えるような工夫が中心で、以前のような住宅市場のバブルをもたらすことには慎重にみえる」
と説明した。
同欄では、日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者が、
「11.2兆円の最終赤字。目を疑う金額です。日本企業の2022年度の純利益は、上位10社の合計で11兆円あまり。たった1社でそれに匹敵する最終赤字を計上するとは、もはやあっぱれと言うほかありません。11.2兆円は投資の失敗。不動産市況の回復を祈ろうにも、そうは問屋が卸しません。第2、第3の恒大集団がそこかしこに存在するからです」
と、事態の深刻さを説明。
「彼らの財務内容も相当に傷んでいるはずで、不動産の上値は重い。不動産の不良資産は、金融機関には不良債権。貸し手と借り手の相互不信が募る中、中国は信用不安と資産デフレに飲み込まれつつあります。財政で景気をテコ入れしようにも、乾いた砂に水をまくようなものでしょう」
と、お先真っ暗の状態だとした。