フードデリバリー大手、出前館の株価が2023年7月13日の東京株式市場で一時、前日終値比80円(20.3%)高の475円まで上昇した。
さらに14日には前日終値比80円(17.5%)高の536円で高値引け(終値と高値が同じ)となり、年初来高値を更新した。
12日の取引終了後に発表した2022年9月~23年5月期連結決算で、最終損益が106億円の赤字(前年同期は295億円の赤字)と赤字幅が縮小したことが買い材料となった。
広告宣伝費は大幅に削減 人件費抑制で、自前の配達拠点は全て閉鎖、コールセンターは集約
それでは決算内容を確認しておこう。売上高は前期比10.2%増の384億円、営業損益は107億円の赤字(前年同期は296億円の赤字)、経常損益は106億円の赤字(前年同期は298億円の赤字)だ。
赤字幅が縮小したのは、コスト削減の徹底によるところが大きい。ライバルに比べても消費者の認知度は十分高いとして、テレビCMなどの広告宣伝費を大幅に減らした。
人件費も抑制した。自前の配達拠点を全て閉鎖し、コールセンターの集約を図ることで固定費削減を図った。さらに、23年8月には配達員に支払う基本報酬を配達1件あたり一律400円に引き下げる(従来は550~600円)予定だ。
売上高好調の背景に、飲食店などから配達を請け負う「配達代行」の伸び
一方、売上高が伸びているのは、配達回数が増えているからではない。1年に1回以上サービスを利用した人の数である「アクティブユーザー数」は5月末で712万人。前年同期比19%減と、大幅な落ち込みを見せている。
コロナ禍で「巣ごもり需要」が盛り上がったのはもはや過去の話となった半面、外食需要は堅調。インフレが進んで消費者の財布の紐がしまり気味である以上、料理の配達回数自体は減っている。
ただ、出前館としては手数料収入が稼げる、飲食店や小売店から配達を請け負う「配達代行」が伸びたことが売上高を押し上げた。
もともと料理を運ぶのが出前館の仕事なのでややこしいが、本来は自前で配達する飲食店などから、配達を請け負うケースが増えているということだ。
注文全体に占める配達代行の比率は5月末時点で6割程度と、2年半前(2割程度)から大幅に高まっている。いまや主要な収益源といえる。
赤字脱却はまだ先...25年8月期の黒字転換目指す 課題に配達員の確保
もっとも、赤字が縮小したとはいえ、赤字脱却はまだ先。通期の23年8月期の最終損益は169億円の赤字(前期は362億円の赤字)を見込んでいる。黒字転換は1期置いて25年8月期を目指している。
フードデリバリー業界は外食需要の復活に伴って配達数が減り、独デリバリーヒーローや米ドアダッシュといった外資系が次々と撤退。現状では事実上、出前館と米ウーバーテクノロジーズ、menu、欧州系ウォルトの4社に絞られつつある。
出前館としては飲食店以外からの配達増を図るなど打つべき手は打っており、たとえば2023年5月には資本金を3億円から1億円に減額。これにより、税制上の負担軽減を図る。
ただ、配達員の確保など難しい課題は残ったままで、市場の期待通りに再成長できるかはなかなか見通せないといえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)