なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか?

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値引きはスパッとやめる

   「安売りスパイラル」からの脱却として、「値引きはスパッとやめるべき」、そして「必要な値上げはやる」と書いている。

   「値上げの作法」は、「自社・自店が価値あるものを提供し続けるための正当な対価を要求する。必要であれば値上げをして、理由をはっきりと伝える」ことだ。

   いくつか事例を取り上げ、値上げしても「思ったほど売り上げは落ちない」ことを例証している。さらに、「値上げは、自社にとっての優良顧客を絞り込むチャンス」だと。

   後半では、以下のようなポイントを挙げている。

・自分が成長したら、価格を上げる
・「ぶっとんだ価格」で、顧客の意識が変わる
・「自分の業種にとらわれてはいけない」

   法人顧客を対象とした、BtoBビジネスの場合、価格交渉はよりシビアになる。ここでも「価値を伝える」という基本は変わらない。「自ら進んで値下げを提案していないか」と戒めている。

   最後に、小阪さんは「マスタービジネス」への道を提唱している。

   商売人は、顧客に有益な価値を提供する「師匠」であるべきというのだ。そうなることで、「価格」から解放される、と考えている。そして、多くの人はすでにマスターとしての知識を持っているとも。

   その究極にあるのは、自分のビジネスを「アート」にしていくことだ。そのためには時間を確保することが重要になる。

   本書を読みながら、ある食品メーカーのことを思い出した。

   田舎の小さな会社である。伝統の食材を扱ってきたが、若い経営者に代替わりして、ヨーロッパ風の味付けをした新商品を開発し、発売。ヒット商品を連発している。ピアニストでもある経営者は、地元で本格的な音楽イベントもプロデュースし、会社のファンも開拓している。経営者、店主が変わることでやれることは無限にある。(渡辺淳悦)

「『価格上昇』時代のマーケティング」
小阪裕司著
PHPビジネス新書
1023円(税込)

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