いま話題沸騰の対話型生成AI(人工知能)「ChatGPT」、小学生の子どもに使わせるべきかどうか、悩んでいる親も多いのではないだろうか。
そんななか、幼児から高校生向け教育支援サービスの「ベネッセコーポレーション」(岡山県岡山市)が2023年7月13日、全国の小学3~6年生とその保護者を対象にしたに「ChatGPTの利用に関する意識調査」を発表した。
「新しい技術の活用力を養うチャンスになる」として、親の約6割が子どもの利用に前向きだった。ただし、「ChatGPTが書いた文章をそのまま使わないでほしい」などと条件をつける親が多かった。
文部科学省は、小学生からのChatGPT利用を基本的に推奨
文部科学省は2023年7月4日、「ChatGPT」をはじめとした生成AIの利用について、小中高校生向けの「ガイドライン」を公表した。
基本的には、「情報活用能力」の育成の観点から、生成AIへの理解や使いこなす意識を育てることは重要だとして利用を推奨しながらも、AIが作った作文を読書感想文として提出することなど不適切な利用方法を数多く例示している。
ベネッセコーポレーションの調査は、小学3年生から小学6年生とその保護者1032組が対象。子どもの回答は、保護者が子どもに聞くかたちで集計した。
まず、子どもがChatGPTについて知っているかと聞くと、「知っている」と答えた子どもは20%、「聞いたことがあるが、どんなものか知らない」が28%、「知らない」が52%だった。なお、保護者で「知っている」と答えた人は50%だった。
次に「知っている」と答えた子どもや保護者に、「ChatGPTをどのくらい使っているか」と聞くと、「よく使っている」(19%)、「時々使っている」(22%)、「試しに使ったことがある」(28%)を合わせて、約7割の69%に利用経験があった【図表1】。
続いて、ChatGPTを知っている保護者に、「子どもがChatGPTを使うことに対してどう思うか」を聞くと、「積極的に使ってほしい」(12%)、「少し使ってみてほしい」(44%)を合わせて、約6割(56%)の保護者が利用することに前向きだった【図表2】。
一方、「あまり使ってほしくない」(24%)、「まったく使ってほしくない」(6%)を合わせて、使うことに否定的な保護者は3割(30%)だけだった【図表2】。ChatGPTを知っている保護者の大半が、子どもに使ってほしがっているわけだ。
子どもは「便利なツール」、親は「子の独創性を伸ばす」
では、どういう理由で子どもに勧めるのだろうか。
前向きな回答をした保護者に「最も自分の気持ちに合う」理由を聞くと、「新しい技術の活用力を養うよい機会になりそう」(34%)が最も多く、次いで「子どもが新しい興味に出会えそう」(25%)、「自分で考える力が伸びそう」(14%)と続いた【図表3】。
逆に、否定的な意見の保護者にその理由を聞くと、「自分で考えなくなりそう」(51%)がダントツに多く、次いで「自分で書いて表現することをしなくなりそう」(21%)、「情報の正誤の判断がつかなそう」(同)と続いた【図表4】。
賛成、反対ともに保護者たちの期待と悩みが伝わってくる内容だ。
ChatGPTに期待する保護者と子どもは、どのように子どもに使ってほしい・使いたいのだろうか。
それぞれの意見を聞いて比較したグラフが【図表5】だ(複数回答可)。これを見ると、保護者と子どもともに「好きなことを調べる時」がトップになった。
しかし、子どもに多いのは「学習での問題解決」「調べ学習(自由研究)での情報収集」などだが、保護者では2位の「アイデアを探したり、考えを広げたりする時」が目立った。子どものほうは便利なツールとして期待している面が強いが、保護者のほうは独創性を伸ばすことを期待している傾向が表れているようだ【再び図表5】。
さらに、ChatGPTを使ううえで大事だと思う点を保護者と子ども双方に聞いたグラフが【図表6】だ。こちらは、ともに同じ傾向を示し、「正しい情報かどうかを確かめる」「個人情報は入力しない」「ChatGPTが書いた文章はそのまま使わない」が上位に並んだ。
親子ともども、ChatGPTの問題点をよく理解していると言えるだろう。
専門家「AIとの対話で、思考力と質問力が問われる」
今回の調査について、広島工業大学情報学部情報コミュニケーション学科の安藤明伸教授(教育工学専攻)はこうコメントしている。
「AIの技術は、今まさに迎えようとしているSociety5.0という時代の鍵となるテクノロジーです。今後も性能や精度が上がり、未来の生活を変えていくといわれています。中でも教育においては、学習の方法やスタイルを大きく変えていくことが予想されます。
AIが教育現場で活用されるようになると、自分で調べて答えたり考えたりしたことを元に、AIを活用して自分の考え以外のアイデアや多くの視点に気付けたりします。そして、AIへの質問と回答のやり取りという対話の中で、『どんなふうに質問すれば、よりよいアイデアを出すためのヒントを得られるか』といった思考力と質問力が問われるようになります。
また、お子さまや親御さんが、既に知りえている確実で正確な情報を敢えてAIに聞いてみることで、生成された内容の正確性やAIが何を学習してそう回答しているのかなど、AIに対する健全な批判力も育成していくことが大切です。
AIを効果的に利用して、1人ひとりの力に応じた学習が進むことで、お子さまの未来はさらに広がっていくでしょう」
調査は2023年6月22日~23日、全国の小学3年~6年とその保護者1032組にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)