福島原発、処理水の「海洋放出」へ最終段階 工事は完了、IAEAも「国際基準に合致」のお墨付き だが、地元の反対、周辺国の懸念も強く...「夏」開始は実現されるか?

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政府との合意に基づく報告書...人や環境への影響「無視できるほど」 政府、風評被害対策、漁業継続支援に基金

   こうして、放出に向け着々を実績が積み上げられ、東電のトンネルなどの工事がこのほど完了した。原子力規制委員会は7月7日、使用前検査を終えたことを示す「終了証」を東電に交付し、放出にゴーサインを出した。

   これより前、IAEAは政府との合意に基づく報告書をまとめ、放出計画について人や環境への影響は「無視できるほど」として、「国際基準と合致する」と結論づけ、7月4日には来日したIAEAのグロッシ事務局長が岸田首相に報告書を手渡した。

   5日、グロッシ事務局長は政府と福島県の地元関係者との協議の場にも出席した。同原発にIAEAの事務所を開設するとして、「IAEAは、処理水の最後の一滴が安全に放出し終わるまで、福島にとどまる」と述べ、政府を側面支援した。

   こうした手続きを踏まえ、政府、つまり岸田首相が、いつ放出を決断するか、という段階にさしかかっている。

   そこで問題になるのが、国内外の理解、納得だ。

   まず国内。政府と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)に対して「関係者の理解なしに、いかなる処分(海洋放出)もしない」と文書で約束している。

   福島県漁連は東電の工事完了を受け、6月30日の総会で、「(海洋放出に)反対であることはいささかも変わらない」とする特別決議を全会一致で採択した。

   全国漁業協同組合連合会(全漁連)も6月22日の総会で改めて、海洋放出反対の特別決議を全会一致で採択している。福島県に近い宮城、茨城両県のほか、海産物を輸出する北海道の漁業者の反発も根強い。

   そうしたなか、政府は海洋放出の風評被害対策として300億円、放出後の漁業継続支援として500億円の基金を設置した。東電も2022年末に、海洋放出による風評被害に対する賠償基準を公表している。

   渡辺博道復興相は7月4日の閣議後記者会見で、改めて「安全性について国民や地元の方々をはじめとして理解が進むように説明を尽くしたい」と述べた。

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