マスメディアへの対応は慎重に
マスメディアへの対応を慎重にするよう求めているが、それはマスメディアが3つの壁に守られているからだ。「公益の壁」、「引用の壁」、「反論の機会提供の壁」だ。長くメディアにいた評者としても、それらを根拠に批判報道をしてきただけに、手の内を見られたような気がする...のは、ここだけの話。
いま、これまで以上に厳しく吟味されているのが、・男女など性差に関すること(ジェンダー問題)・個人情報・プライバシーに関すること・消費者や国民の意識とズレた発言をすること、だとしている。ごく最近の事例を豊富に紹介しているのでビビッドだ。
ここにはポイントだけ挙げたが、本文はゼミナール形式も取り入れて、読みやすく書かれている。
さまざまな分類を列挙したが、危機管理の基本は、「良心に従って、当たり前のことを当たり前に行う」ことだとしている。裏返せば、当たり前のことが出来ない人々があまりにも多すぎるということだ。
現在、問題になっている政府のマイナカードの事例は、どれに当てはまるか考えたが、さまざまな位相で引っ掛かりそうだ。危機管理とは関わりのない人にとっても「頭の体操」として役に立ちそうな本である。(渡辺淳悦)
「その対応では会社が傾く」
田中優介著
新潮新書
836円(税込)