TDLの会員制レストラン「クラブ33」での出来事
クレジットカードの最高峰ブラックカード。筆者である私も、かつては数枚のブラックカードを所持していた。だが、リーマン・ショック以降、不況の波がカード業界にも押し寄せてきた。結果的に、現在も所持しているのは、JCB「ザ・クラス」のみである。
当時は「オフレコ情報」だったが、この「ザ・クラス」を所持していると、東京ディズニーランド(TDL)の「クラブ33」が予約できた。「クラブ33」はTDL内の会員制レストランで、一般には公表されていない場所だった(が、ネットなどを通じて広く知られるようになってしまった)。本人を含めて8名まで予約可能だったので、私はよく接待に活用していた。
予約の際は、「ザ・クラス」のデスクからTDLに連絡が入る仕組みだった。ある大型連休の際、到着すると、入場制限が掛けられていた。しかし、スタッフに説明すると、「モーゼの十戒」のごとく道が出現する。さらにゲートをくぐると、目の前が駐車場に早変わりする。
こうなると、ちょっとした優越感を感じる。取引先の部長の奥様や子供は、まるで魔法でも見るかのように私を見つめている。しかし、こんな状況を演出できるかどうかも、コンシュルジュの対応次第である。
それから、食事を堪能して、お土産を買って、いよいよホテルにチェックインすることになった。ホテルは当時(も今も)人気の「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ」。しかし、フロントはごった返していた。チェックインまで1時間は掛かりそうなくらいに混んでいた。すると、「クラブ33」の緑の袋を見つけたホテルスタッフが駆け寄ってくる。奥の個室でチェックインの手続きをしてくれたのだった。
取引先の部長の奥様や子供はおろか、部長本人までが羨望の眼差しで私を見つめている。翌年の継続受注をこの時に確信した。現在、「ザ・クラス」を所持していても、「クラブ33」に入店できない。現在ではこの特典は取り扱われていないからだ。しかし思い出すにつけて、毎回、スペシャルな対応をしていただいた。そんなこともあり、「ザ・クラス」は大切な一枚としていまだに愛用している。
本書は、世界でNo.1コンシェルジュとして、14年間、16万人に接客して培ってきたサービス&コミュニケーション術を完全公開した作品である。2014年発刊だが、色あせない読み応えのある内容である。営業のみならず、接客、クレーム対応といったビジネスシーンにも役立つのではないかと思う。(尾藤克之)