J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

40~50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」 3位に日本IBMデジタルサービス、2位に中外製薬、1位は?

   政府の「転職しやすい労働市場改革を促す施策」に、働き盛りのミドル世代の注目が高まるなか、転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が、40~50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」を2023年6月22日に発表した。

   日本の労働市場では、長らく是とされてきた「長く働く、勤めあげる」という概念に大きな変化が起きている。寄せられたコメントからは、終身雇用とリスキリングのあいだで揺れるミドル世代の気持ちがうかがえる。

ランキング上位は「向上心が刺激させられる」企業

   政府の「経済財政運営と改革の基本方針 2022(骨太の方針)」の原案(2023年6月7日公表)によると、「成長分野への労働移動の円滑化」を目的に、個人への直接投資の検討や企業のリスキリング(学び直し)支援、ベンチャー企業への投資といった、さまざまな方針が打ち出された。

   なかでも、転職しやすい労働市場改革を促す施策の一環とした「副業・兼業など多様な働き方の推進」「自己都合退職の失業給付の迅速支給」といった施策には、労働者からも高い関心が寄せられており、特に40~50代の「ミドル層の転職」への注目が年々高まっている。

   今回の調査では、ミドル層でも年功序列に頼らず、経験やスキルでキャリアを切り拓いていける企業を探った。

   40~50代の中途入社者が「育成環境が優れている」と評価した企業を集計したランキングによると、第1位はマーケティングDX事業などのナイル、第2位に中外製薬、第3 位には日本アイ・ビー・エム デジタルサービスが、トップ3だった。【表1参照】

kaisha_20230705152642.png
表 40~50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」TOP30(オープンワーク調べ)

   TOP3の「人材の長期育成」スコアは4.00超で、充実したスキル育成環境に加え、「若手に負けられない」「自学自習しないと置いて行かれる」向上心が刺激される点をあげる声が少なくなかった。

   ランクインが最も多かった業界は、30社中13社の「Sler、ソフト開発、システム運用」業界だった。充実した研修・人材育成制度は当たり前。「自学しないと置いて行かれる」焦燥感や向上心が自然と湧き上がる環境を挙げる声が多数あった。また、インターネットサービスや通信、化学、コンサルティングといった業界の企業が並んだ。

   オープンワークは、「なぜ自学すべきか?」スキルアップした先に得られるメリットを企業が明示しているかどうかがリスキリング施策の成功のカギ、とみている。

「ランクイン企業の中途入社者が投稿した『働きがい・成長』のクチコミをみると、入社形態を問わず研修育成制度が充実している環境、本業とは直接関係がない内容でも学習支援してもらえる環境を特徴として挙げる声が多く見られました。
加えて印象的なのは、企業から与えられた成長支援環境を持て余すことなく、日々の業務に活かすべく自学自習する姿勢がある様子も多く投稿されていた点です。豊富な研修機会をただ社員に提供するだけでとどめず、社員が能動的にスキルアップをしたくなる、焦燥感や向上心の生まれやすい組織風土があると言えそうです」

   それでは、上位にランクインした企業の中途入社者が、同社が運営する「OpenWork」に投稿した「成長環境」に関する社員クチコミを見てみよう。

法律や社会保障などの学習が自分の好きな時間にできる

   ランクインした企業の中途入社者が寄せた「成長環境」に関する社員クチコミによると......。

「日々のニュースが仕事に直結するスピードを感じながら、営業スキルも磨かれ、証券知識も豊富になり、自分の裁量で仕事ができます。成長、キャリア開発するためのサポートも非常に充実しており、直接仕事に関係ないような資格取得にも補助がでます」(第4位 野村證券 支店営業、女性)
「常に高いスキルを求められるため継続的に自己研鑽が必要ですが、ITスペシャリストとして自信と誇りを持って仕事に取り組むことができます。仕事で求められるスキルをしっかりと習得していくことができていれば、自然と業界で必要とされる様々なスキルを身につけられると思います。その反面、努力を怠って周りについていけなくても置いていかれるだけなので、本人の高い意識が必要」(第3位 日本アイ・ビー・エム デジタルサービス ITS、男性)
「若い社員の意欲が高いので、負けていられないという気持ちでモチベーションが向上しました。資格取得支援の社内制度もあるので、語学の勉強がはかどりました」(第1位 ナイル コンテンツ管理、男性)
「社内には自己成長のためのプログラムが多々ある。活用次第では能力開発も可能であるが、興味ないとただ惰性で仕事をするだけになる。周囲が能力開発に敏感な人が多いため、イヤでも刺激を受けて能力開発に勤しんでいる」(第2位 中外製薬 企画、男性)
「知識向上に関するもの、マインド向上に関するもの、両者において、さまざまな社員限定のコンテンツが用意されているので、業務内容以外の法律や社会保障など、たくさんの学習が、自分の好きな時間にできます。また、非常の自己成長欲の高い方が先輩方に多いので、日々刺激を受けています」(第12位 プルデンシャル生命 営業、女性)
「毎月のように何かしらの研修があり、またAWSやSalesforceなどの3rd Party系の研修も自由に受けられるため、成長速度は速いと思う。悪く言うと勉強しなければならないことが多く、土日や平日深夜に勉強して追いつく必要がある」(第9位 NTTデータ 法人ソリューション、男性)

   オープンワークスは、

「『なぜ自学自習をすべきなのか?』、スキルアップを通じ自分で待遇や未来を切り拓いていける道筋を、企業が示すことがリスキリング成功のカギ」

   としている。

社外学習や自己啓発を「行っていない人」日本は46%

   経済産業省の「未来人材ビション」(2022年5月)によると、「社外学習・自己啓発を行っていない人」の割合が日本は46%で、これは諸外国と比べても非常に高くなっている。

   自学自習することへのハードルが高い人も多いなか、社員が自ら必要性を感じてリスキリングすることで何を得られるのか、企業が明確に道筋やメリットを提示させることが重要といえる。

   実際、ランクインした企業の「クチコミ」を見ていくと、スキルアップをすることで一層キャリアアップや昇進昇給が望める、他部署でも通用するスキルを得られるといった声がみられた。

「年齢や在籍年数関係なく自己成長を続けることで、企業に自身のキャリアを預けず、自分の力で待遇や未来を切り拓いていくマインドセットはビジネスパーソンにとって一層肝要となるでしょう」(オープンワークス)

   自学自習やスキルアップを通じて得られる「変化」に関する社員クチコミをみると――。

「各自スキルアップ制度(書籍購入、セミナー費用補助支援)を有効活用して当たり前のように成長を図ろうとする環境。ある業種で満足した人向けに事業部やチーム間を体験・異動できる制度がある」(第1位 ナイル デジタルマーケティング、男性)
「教育プログラムが充実しており、社内にコンサルタント経験者による教育プログラムが運営されています。経験の浅い方でも成長しやすい環境が整備されています。所定の研修を受講しなければプロモーションできないため、業務と並行しての受講はかなり大変です」(第5位 クニエ シニアコンサルタント、男性)
「社員教育に力を入れており、多種多様なトレーニングを受ける機会がある。また、キャリアプランに応じて社内の異動も柔軟に受け入れてもらえるのでモチベーション高く新しいことにチャレンジできる」(第9位 NTTデータ 主任、男性)
「教育の材料は揃っているので、自己成長に関しては本人次第なところはある。キャリアに関しても、定期的に他事業部の話を含めて、異動出来る仕組みになっている」(第28位 ボストン・サイエンティフィック ジャパン エンドスコピー、女性)
「ポスティング制度を活用すれば自分でキャリアを考えて行動に移すことが出来ます。社内教育も豊富なのでリスキリングもできます。反対に、年功序列的なキャリアが好きな人には向かないと思います」(第29位 富士通 SE、男性)

   なお、調査はOpenWorkに投稿された40~50代の中途入社者による会社評価レポートの回答2万3276件を対象データとして分析した。ただし、対象者・集計期間を限定しているため、OpenWorkの各企業ページで掲載している企業評価点とは異なる。