Web3、メタバース、NFTで社会はこんなにも変わる!

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   Web3、メタバース、NFTという言葉を聞いても、自分とは関係のない話だと思っている人もいるかもしれない。だが、あらためて強調したいが、それらはインターネットの誕生にも匹敵する新たな技術だという。

   本書「テクノロジーが予測する未来」(SB新書)は、単なる技術の解説書ではない。働き方や文化、教育など社会に及ぶ変化の可能性にまで言及している。

「テクノロジーが予測する未来」(伊藤穣一)SB新書

   著者の伊藤穣一さんは、デジタルガレージ取締役、共同創業者 チーフアーキテクト。千葉工業大学変革センター長。米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長、金融庁参与などを歴任。

Web3の特徴は「分散型=非中央集権的」

   序章でWeb3、メタバース、NFTについてわかりやすく説明している。 Web3の特徴は「分散型=非中央集権的」ということだ。ブロックチェーンという仕組みによって、さまざまな非中央集権的な試みが行われている。

   すでに「クリプトエコノミー」という新しい経済圏が形成されている。暗号資産(クリプト=仮想通貨やトークン)が流通し、無数のDAO(分散型自律組織)があるという。

   メタバースの大きなトレンドは、バーチャルリアリティ(VR)だ。コロナ禍でリモートワークが普及し、バーチャル世界で「会う」ことへの抵抗感は小さくなった。アイデンティティやコミュニケーションに大きな変化が起こるのは確実だという。

   NFTは、「代替できない価値を持つトークン」。伊藤さんは、お金に換算できない価値を可視化する手段だと考えている。

   投機目的で、「NFTバブル」という状況になったが、以下のように初心者の注意点を挙げている。

・「好きだから買う」のがオススメ。とにかく楽しむ
・購入した「NFTのコミュニティ」に参加する
・NFTは儲かるから」という理由で始めない
・NFTアートは「短期での転売」を繰り返さない

仕事は「組織型」から「プロジェクト型」に

   第1章は「働き方」だ。

   仕事は「組織型」から「プロジェクト型」に変わるという。その主体はDAO(分散型自律組織)だ。プロジェクトごとに立ち上げられるので、いわば映画制作の現場のようになる。

   伊藤さんも「Henkaku」というコミュニティを主宰し、換金性のない独自のトークンを発行しているそうだ。感覚的には「Facebookグループをつくる」くらいの手軽さでつくれるが、DAOが発行するトークンはブロックチェーンに記録されるので、透明性が高い。

   DAOには「株主、経営者、社員、契約社員、アルバイト」という構図がないので、働き方は勤め先に縛られなくなる。

   ただし、現状の日本ではトークンを発行・上場するだけで重い税を課せられるので、DAOを立ち上げるのはかなり難しいそうだ。

   第2章は「文化」。

   NFTによって「アーティストが自分の力で稼げる仕組み」が生まれた。アーティストが事業者になれることを高く評価している。そして、文化の本質は「消費するもの」から「コミュニティに参加するもの」へと変化する、と指摘している。

   何をNFT化したら面白いか、いくつかアイデアを披露している。たとえば、以下のように。

・映画制作のスタッフジャンパーのように、コミュニティメンバーにだけ付与される、転売不可なデジタルファッション。これを自分のアバターが身につければ、そのコミュニティのメンバーであることを示すことができる
・コミュニティに貢献した人だけに付与される、転売不可の「ありがとうNFT」。このNFTを持っていると、コミュニティのイベントに参加できたり、コミュニティのデジタルプロダクトなどが贈られてきたりする
・レストランで「よい振る舞い」をしたお客に付与される、転売不可の「上客NFT」。このNFTを持っていると、「一見さんお断り」のレストランでも予約がとれる

   非金銭的で長期的な価値であるという点において、宗教的行為や学位をNFT化することも提案している。伊藤さんが所長を務める千葉工業大学変革センターでも、学位を発行する準備をしているそうだ。学歴詐称や卒業証書の偽造といった問題はなくなる。

   Web3で形成される「クリプトエコノミー」は、アメリカの若者の間で、「BANKLESS(銀行なし)」という社会的な動きになっているという。

   稼いだ仮想通貨を仮想通貨ATMで現金に替えて、モノを買う。したがって現金を預けておく銀行は必要ないというワケだ。世界中で当たり前のようにして暗号通貨が使われる日もある、と予測している。

   第3章の「アイデンティティ」では、人類は「身体性」から解放され、「場ごとの文脈に沿った自己として存在する」という大胆な予測をしている。メタバースがそうした多様性を生むからだ。「本当は何者なのか」が関係ない世界の到来という予測は興味深い。

   さらに、第4章「教育」では、学歴の意味は薄くなり、学校内外でどんな活動をしたのか。社会に出てからはどういうコミュニティで、いかに貢献し、何を達成してきたか。――こうした履歴すべてがブロックチェーンに記録されるので、個人の能力・資質があからさまになると考えている。逆に、いまの学歴社会よりも厳しい社会かもしれないが、「学びと仕事が一本化する」という。

   新たな直接民主主義が実現する未来。だが、日本では、Web3時代に求められる優秀なエンジニアやスタートアップが続々と海外に拠点を移している。

   トークンを発行・上場して投資家に買ってもらう資金調達法が、事実上不可能だからだ。そのため、クリプトエコノミーに関する法整備を求めている。

   「最先端テクノロジーが、日本再生の突破口を開く」という著者の心意気に賛同する人は多いだろう。(渡辺淳悦)

「テクノロジーが予測する未来」
伊藤穣一著
SB新書
990円(税込)

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