「社員の送別会に子連れ、タダ食いの派遣女性ってアリ?」正社員男性の怒りの投稿が炎上! 非常識で図々しい?よくある話で大らかに?...専門家に聞いた(3)

   正社員の送別会に、幹事が職場の派遣女性たちを呼んだのはいいとして、彼女たちの「子どもを連れて行ってもよいか」という頼みにOKを出してしまった。

   さあ、大変だ。子どもたちの飲食費は正社員が出さなければならない。「腹が立つ。出したくない」という男性の投稿に「図々しい」「非常識」と派遣女性を非難する声。

   一方、「うちの会社でも子連れOK」「もっと大らかに」と派遣女性を擁護する声も。専門家に聞くと――。

  • 子連れで送別会ってアリ?(写真はイメージ)
    子連れで送別会ってアリ?(写真はイメージ)
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会社の宴会で子どもにタダ飯を食べさせるのは、関西の会社にある傾向?

   <「社員の送別会に子連れ、タダ食いの派遣女性ってアリ?」正社員男性の怒りの投稿が炎上! 非常識で図々しい?よくある話で大らかに?...専門家に聞いた(1)>および<「社員の送別会に子連れ、タダ食いの派遣女性ってアリ?」正社員男性の怒りの投稿が炎上! 非常識で図々しい?よくある話で大らかに?...専門家に聞いた(2)>の続きです。

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気持ちよく送ってあげたい(写真はイメージ)

――ところで、これはジョークのような話ですが、男性が追加のカキコミで、子どもを会社の宴会に連れてきてタダ飯を食べさせるのは、「関西の会社によくある傾向と知人から聞いた」「たしかに私の会社は関西にある」と書き込んで、関西の人たちから「そんな話、聞いたことがない!」と総スカンを食っています。
なかには「関西だからこそ、金銭感覚はしっかりしている」と、男性の「関西人偏見」に強く異議を唱える声もありました。

川上敬太郎さん「思うに、地域による傾向というより、会社ごとの文化や慣例の違いなのではないかと思います。職場のアットホームな雰囲気を大切にしている会社であれば、お子さんたちもみんな連れておいで、という感じになりそうです。それはそれで、温かみや良さを感じる人もたくさんいると思います」

――川上さんならズバリ、憤りを抑えられない男性にどうアドバイスしますか。

川上敬太郎さん「金銭負担の大きさを考えると、投稿者さんが怒りの感情を抱いてしまうのも分かる気がします。ただ、送別会という飲み会の話とはいえ、職場の関係者たちで行うイベントなだけに、仕事に準じるかたちで何が問題なのかはキチンと整理しておいたほうがよいと思います。
そう考えると、ただ幹事さんに不満を伝えて責めるだけではなく、代替案を出したり、相談に乗ってあげたりということも、されてはどうなのでしょうか。投稿内容を見る限りでは、投稿者さんはただ不満を伝えただけのようなので、送り出す側としての当事者意識や幹事さんの同僚としての優しさを感じませんし、ビジネスパーソンの対応としても物足りない印象を受けてしまいます」

男性の投稿内容にひそむ「派遣社員」に対する差別的な見方

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私の心が狭いのだろうか(写真はイメージ)

――たしかに、「お金の不満」ばかりですよね。

川上敬太郎さん「また、投稿者さんは金銭負担の大きさだけでなく、送別会に派遣社員が参加することや、お子さんを連れてくることの是非も問題視しているようです。
では、派遣社員ではなく、正社員であればお子さんを連れてくるのはOKなのでしょうか? また、投稿にある『派遣の子どもって連れてくるものですか?』という言い回しも気になります。
『パート』や『アルバイト』などもそうですが、その人個人ではなく『派遣』と雇用形態でひと括りにした言い回しがサラッと出てしまう点には、派遣社員の方々のことを一緒に働く仲間や一個人として見るのではなく、『派遣』という括りで線を引いて見てしまっている可能性を感じます。
そこには、差別的な見方につながってしまう危険性が潜んでいるかもしれません」

私が幹事なら、総務部門に掛け合い、会社から資金をあおぐ

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上司に相談して会社の経費にしては(写真はイメージ)

――なるほど、そのとおりですね。また、幹事の不手際が問題になっていますが、もし川上さんが幹事ならズバリ、今回の8人の職場で5人が異動するという送別会、どう仕切りますか。
どんな場所で、どんな会費の割り振りで行ない、派遣社員の仲間も呼びますか。子ども連れもOKにしますか。

川上敬太郎さん「送別会となると、花束などのプレゼントや色紙なども手配するなど、ただ飲み会の会場を押さえるだけというわけにはいかないかもしれません。そう考えると、5人も主役がいる送別会を1人で切り盛りするのはかなり厳しいように思います。
ただ、今回の投稿は飲み会の手配にフォーカスされているので、その点だけに絞れば、まずは送別される5人の方々それぞれの意向を確認したうえで、その希望をできる限りかなえることが大切なポイントになるように思います。
その方々が特に夜の飲み会にこだわらないようであれば、ランチ会でもよいのかなと思います。しかし、気兼ねなく大いに飲んで語らいたいということであれば、その意向を優先し、今回は、お子さん連れは遠慮していただいたほうがよいかもしれません」

――会費の割り振りはどうしますか。

川上敬太郎さん「送り出す側に対しては、金銭負担が重くなり過ぎないように配慮することが重要です。5人分の費用を3人で負担するだけでも相当な重さだと思います。
また、派遣社員を呼ぶかどうかは、これまで同じ部署で一緒に働いてきた仲間たちが異動してしまうわけですから、送別されるメンバーたちとは一切接点がないとか、仲がとても悪いなど特別な事情でもない限り、無理強いしない前提で派遣社員の方々にも参加してもらえるよう声がけすればよいのではないかと思います。
そこで、派遣社員の方々が参加する場合、飲み代が1人4000円のコースなのであれば、他社員の負担が大きくなっている事情を説明したうえで、派遣社員の方々にも4000円およびお子さん同席の場合はその費用も負担していただかないと他の社員はキツ過ぎると思います。
ただ、それでも送別されるメンバー分を負担する社員たちの金銭負担はキツイ可能性もあるので、上司や総務部門などにかけあって、資金援助をお願いしてみることも方法の1つだと思います」

子どもがいる人も参加できる、昼の「ランチ会」はおススメ

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昼ランチの送別会もいい(写真はイメージ)

――会社からも相応の援助を出させるわけですね。川上さんが考える、会社の宴会の理想のありかたは、どのようなものですか。

川上敬太郎さん「会社のメンバーで行う宴会ですから、社員同士のコミュニケーションがより深まるなど、開催することが職場にとってプラスにならなければ意味がないと思います。そのためには、誰もが気持ちよく参加できる場にしなければなりません。
もし、そうならないようであれば、無理して宴会など開く必要はないのではないでしょうか。一方、強制参加に近い形で参加させるのであれば、費用は会社持ちが望ましいと思います。
また、今回の派遣社員の方々がそうであるように、お子さんがいる人のことも考えると、夜の宴会よりランチ時間にセッティングしたほうが参加しやすいケースもあると思います。アルコールありきでなくとも、社員間のコミュニケーションを深めることは可能です」

――ランチ会や、職場の会議スペースなどに料理を持ち込んで行う方法もアリですね。最後に、投稿した男性や派遣社員の女性たち、そして幹事に呼びかけたいことがありますか。

川上敬太郎さん「今回の投稿内容を見る限り、送別される5人の方々の気持ちは尊重されているのかと疑問に感じました。最も重要なことは、主役である5人の方々を気持ちよく送り出すことです。
最初のカキコミを見ると、投稿者さんは今回の一件で幹事に不参加を伝えたそうですが、その行動は誰のためになるのでしょうか? 少なくとも送別される5人の方々のことを第一に考えた行動ではないように思います。
金銭負担の大きさに不満を持つ気持ちはわかりますが、それで感情的になって、代替案も出さずに不参加を伝えることが立派な振る舞いだとは思いません。幹事さんも頭を抱えたと思います。
送別会には参加せず、別途個別に送別しようというお考えがあったのかもしれませんが、まずは自らも送別する側の当事者の一人として、どうやって送別会を成功させるかを考える必要があったのではないでしょうか」

全員に欠けている「送別される5人」に対する感謝の気持ち

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送られる人に感謝の気持ちを(写真はイメージ)

――男性の追加のカキコミによると、派遣社員の女性たちからは「何が何でも送別会に参加したいという鼻息が、すごく伝わってきた」と描写されています。

川上敬太郎さん「派遣社員の方々は、3人の正社員の方々の金銭負担のことを踏まえて、本来の会費分を支払うと自ら提案してもよかったのではないでしょうか。もし、3人が大変な思いをしているのを横目に見ながら、自分たちは『知らぬ、存ぜぬ』で楽しもうとしていたのだとしたら、投稿者さんが怒りを感じるのも致し方ないと思います。
そして、幹事さんは送り出す3人の社員の大変さを見越して配慮してあげて欲しかったですが、板挟みにあって大変だと思います。どうすれば良いかを一緒になって考えてくれる他の社員さんがいればと願います。
送別される5人の方々は、今回の混乱をどう思っているのでしょうか。一緒にこれまで頑張ってきた仲間をねぎらい、次のフィールドでの活躍を願いエールを送るために、派遣社員も含め送り出す社員全員で場をつくる。そのためにもう少し、みなさん助け合われてはどうなのかと感じてしまいます。
今回送別される方々が5人もいるということは、その入れ替わりで新たに迎え入れるメンバーもいるのかもしれません。その方々の歓迎会では、今回の教訓を活かし、ぜひ新メンバーの気持ちを第一に考えてみなさんで協力し合っていただきたいと願います」

(福田和郎)

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