景気後退で「ロスジェネ再来」? 「履歴書100通送って、面接ゼロ!」海外エリートに広がる「就活燃え尽き症候群」(井津川倫子)

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   景気後退が指摘される英国や米国で、求人市場のトレンドが変わったと報じられています。

   コロナ禍やアフターコロナの人手不足を背景に、「引く手あまた」だった若手ビジネスパーソンたち。とりわけIT系の求人は「売り手市場」が続いていましたが、ここにきて雲行きが怪しくなってきたようです。

   大規模な人員整理や採用停止の動きが広がるなか、よりよい待遇を求めて強気の転職を繰り返してきたIT系エリート社員でさえ、なかなか次の職が見つからないとか。

   終わりの見えない就職活動に、「もう疲れた!」と嘆く若者が急増しているようです。

「もう転職活動はこりごり!」エリートほど次の職が見つからない...

   コロナ禍で企業がIT化やDX化を推し進めるなか、米国や英国では企業の積極採用が続いていました。とりわけ、事業拡大を続けるIT企業は、若手ビジネスパーソンに人気の転職先として「受け皿」になっていましたが、景気の後退と共に潮目が変わってきたようです。

   2022年までは比較的ラクラクと転職先を見つけていた求職者たちが、最近は応募をしてもなかなか成果が得られないようです。「就職先はいくらでもある!」とばかりに強気の転職活動を想定していたエリートでさえ、あまりにも厳しい現実に「もう就職活動はこりごりだ!」と、疲れ果てていると報じられています。

   メディアでは「job search burnout」(就活燃えつき症候群)というワードを目にするようになりました。

What is" job search burnout"?
(「就活燃えつき症候群」って何?:米メディア)

Why unemployment workers are so burnt out?
(なぜ、求職者たちはこんなに燃え尽きているのか?:英BBC放送)

   英BBCは、度重なる不採用通知と時間の消費に苦しみ、精神的に参って転職をあきらめる若手が増えていると伝えています。たとえば、大手IT企業の採用担当だった女性は、「I was just getting one rejection after another」(次々と不採用通知を受け取っただけ)と、自身の転職活動を振り返っています。

   どんなに履歴書を送っても、なしのつぶて。大企業をあきらめてスタートアップ企業に応募したら、「あなたはオーバースペックだ」と断られるといった状況に心身ともに疲れ果てて、とうとう転職活動から離脱したそうです。

   さらに、同じく大手企業のエリート社員だった男性は、「履歴書を100通出して、面接にたどり着いたのはゼロ」と、想定外の苦戦ぶりを明かしています。この男性は、「コネがない限り、ぜったいに面接には呼ばれないことが分かった」と、就活の不条理さを嘆いていました。

   報道によると、特に就職が難しくなった職種は、マーケティングや広報、そして採用担当職だそうです。景気後退でこれらの職域の予算をごっそりと減らす企業が増えていることが原因ですが、IT企業を中心に、リストラや採用控えによる就職難はかなり長期化するという見通しです。

   IT企業のマーケティングや広報といえば、誰もが憧れるエリート職だったはず。つらい転職活動の果てにようやく次の職を見つけても、以前よりも低い給料、遠いオフィス、条件が悪い職場環境になるケースが増えているそうです。

   肉体労働などのいわゆる「ブルーカラー」職は慢性的な人手不足に悩んでいますが、IT企業の「ホワイトカラー」職などエリート系職種ほど求人環境が悪化している様子。元エリート社員が「job search burnout」(就活燃えつき症候群)に陥る可能性は高いようです。

   もともと、転職に抵抗感が無く、メンタルが強いと思っていた米国や英国のエリート社員ですら、燃えつきてしまうほど厳しい状況なのでしょうか。強気の転職活動が当たり前だった「売り手市場」時代は、終わりに近づいているようです。

「就活燃えつき症候群」にならないコツ 「ポイントは『量より質』」と言われても...

   私も経験したことがありますが、いい年になって不採用通知を次々に受け取ると、気持ちが相当へこみます。まだ社会人経験がなかった学生時代に比べて、不採用の衝撃をより敏感に感じるようです。

   「就活燃えつき症候群」が増えるにつれて、その対応策を伝授するメディアも増えてきました。いくつか、ポイントを拾ってみましょう。

   1つ目のアドバイスは、「Set time limit」(タイムリミットを設ける)です。

   転職活動を始めると、どうしても時間が許す限り転職サイトを見てしまいます。気がつくと、ずっと転職サイトでジョブサーチをし続けたり、応募メールを送ったり、といった作業に没頭するはめになります。

   専門家は、「1日のうちに、転職サイトを見ない時間を決めよう」とアドバイスしています。転職活動から離れて、リフレッシュする時間を設けることがキモだそうです。

   2つ目のアドバイスは、「Boost Your Self-Confidence」(自己肯定感を高める)です。

   履歴書を送り、企業からの返信を待つ間、自信を失ってしまうことが多々あります。専門家は、転職活動ではとにかく「Self-Confidence」(自己肯定感)を保つことが重要だと指摘しています。

   元気が出る音楽を聴いたり、気持ちを底上げする本を読んだり、ポッドキャストを聴いたりして「自分は有能だ!」と信じることが大切!意図的に、自分の気持ちをコントロールしていきましょう。

   「就活燃えつき症候群」になる原因の一つは、適していない求人に応募することだそうです。特に苦戦が続くと、自分のスキルや興味、価値観と一致しているかどうかに関係なく、手当たり次第に応募する傾向があるそうです。

   基本的なことですが、応募をする前に自分に適しているかどうかを確認することも、有効な「燃えつき回避策」になるようです。

   すべてのアドバイスに通じるのは、「it is essential to focus on quality over quantity」(量よりも質に焦点を当てること)でした。

   100通の履歴書を送る代わりに、職種や企業について時間をかけて調査して、自分にあった求人に応募する方が良い結果を生むと、多くの専門家が指摘していますが、「それができれば苦労しないよ!」というのが、求職者の心の声ではないでしょうか?

   海外エリートにじわじわと広がる「就活燃えつき症候群」。そろそろ日本にも上陸するのでしょうか? 究極の「買い手市場」を経験した「ロスジェネ時代」の再来は避けたいものです。

   それでは、「今週のニュースな英語」「burnout」(燃えつき)を使った表現を取り上げます。

The fire burned itself out
(火は燃え尽きた)

She quit her job because of burnout
(彼女は精魂つき果てて退職した)

I have not reached burnout
(私はまだ燃え尽きていない)

   ちょっと前までは、歴史的な「売り手市場」を背景に、軽々と職場を去る「The Great Resignation」(大量離職時代)のワードがメディアを賑わせていましたが、求人市場のトレンドは一気に変わるものです。時代の波に翻弄されずに、自分が満足する働き方を見つけていきたいですね。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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