製造業の「物価高倒産」前年から5倍増
物価高倒産を産業別でみると、10産業のうち、金融・保険業を除く9産業で前年同期を上回った。倒産件数が最も多かったのは「製造業」の75件(前年同期比400.0%増)で、前年の15件から5倍も増えた。
次いで、「建設業」が59件(前年は17件。前年同期比247.0%増)、「運輸業」が50件(同32件、56.2%増)、「卸売業」が40件(同10件、同300.0%増)、「サービス業ほか」が35件(同4件、同775.0%増)だった。【図2参照】
再び円安傾向が強まり、今後も物価高が幅広い産業に影響を及ぼすことが懸念される。
業種別でみると、最も多かったのは「道路貨物運送業」の46件(前年同期29件)。次いで、「総合工事業」の31件(同12件)、「食料品製造業」25件(同9件)が続いた。
燃料価格の高止まりに加えて、資材や原材料、食材など幅広い分野で値上がりが進んだ。さらに、水道やガス、電気代などのインフラ料金、人件費も上昇している。
その一方で、価格転嫁の遅れから企業収益が悪化。資金繰りに深刻な影響を及ぼしていることがうかがえる。
また、物価高倒産を形態別(件数)にみると、「破産」が263件(前年同期比216.8%増)で、全体の87.6%を占めて圧倒的。「特別清算」が5件(同400.0%増)で、消滅型の倒産が全体の9割(89.3%)を占めた。
東京商工リサーチは、
「業績回復の遅れと物価高によるコストアップで先行きの見通しが立たず、事業継続を諦める企業の多さを示す」
とみている。
一方、再建型の「民事再生法」は11件(同450.0%増)、「会社更生法」が前年同期と同じ1件だった。
この夏、「ゼロ・ゼロ融資」の返済がピークを迎える。
東京商工リサーチは、
「過剰債務を抱え、コロナ禍からの業績回復が遅れ、新たな資金調達も難しい企業が破産を選択している状況を示している」
と指摘する。