これで日銀は、政策修正に動けなくなった
さて、しかしながら足元では、急激な円高が始まっている。その大きな要因になっているのが、日本銀行が7月27日~28日の金融政策決定会合で金融緩和策の修正に動くのではないか、という観測だ。
「その可能性は低くなった」とみるのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英国氏だ。
木内氏はリポート「米国の物価高騰は危機を脱したか(6月CPI)」(7月13日付)のなかで、その理由をこう説明する。
「6月CPI統計を受けて、米国金融市場は比較的大きく反応した。米国10年国債利回りは、前日の4.0%台から3.68%台に大きく下落した。ドル円レートも1ドル139円台から138円台へと下落している。
この統計を受けても、次回7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の追加利上げが実施されるとの市場の見方は変わらない。しかし、FOMCが示している年内あと2回の追加利上げの実施については、金融市場の見方は揺らいできている。FF金利先物市場は、7月利上げが最後となる可能性を織り込んでいる。他方で、年内の利下げ観測が再浮上してきた様子は見られない」
この結果、日本銀行が市場に追い込まれるかたちで、YCC(イールドカーブ・コントロール)修正に動く理由は遠のいたというのだ。
「米国での10年国債利回りの低下を受けて、日本でも10年国債利回りはやや低下している。米国の長期国債利回り上昇に引きずられて日本の10年国債利回りが変動幅の上限であるプラス0.5%に接近し、日本銀行がその上限を守るために大幅な国債買い入れを強いられるリスクは遠のいた。
さらに、大幅な国債買い入れを回避するために、日本銀行が次回7月の金融政策決定会合で、YCCの変動幅再拡大などの修正に追い込まれる可能性も、現時点で考えれば低下したと言えるだろう」
(福田和郎)