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アパレル・ファッション業界2022年の年収調査 アフターコロナの業績回復、人手不足対応で...店頭に立つ職種は平均年収引き上げ

   アパレル・ファッション業界の平均年収は?

   アパレル・ファッション業界専門の転職支援サービス「クリーデンス」を運営するパーソルキャリア(東京都千代田区)は2023年7月4日に、アパレル・ファッション業界の「2022年版 平均年収」を発表した。

   それによると、前年同期比で平均年収の上り幅が大きい業種として、「店長」で14万円の上昇(平均年収は394万円)、「MD(マーチャンダイザー)・バイヤー」は6万円の上昇(平均年収は436万円)、「販売」は5万円の上昇(平均年収は321万円)だった。「店長」「販売」などはコロナ禍にともなう人材流出があったが、現在では店頭への客足の回復傾向の影響から、人材の確保が急務となったことなどから、年収の引き上げにつながっているようだ。

   また、平均年収の下がり幅が大きい職種として、デザイナーが描いたデザイン画をもとに型紙(パターン)を起こす「パタンナー」が、前年比27万円の減少と目立った。技術職であるパタンナーは、他の職種に比べて兼務がしづらい職種。そのため働く環境も整っており、自身のライフイベントにあわせて時短勤務を選ぶ人も多いことなどが、年収にも影響しているようだ。

  • アフターコロナにおけるアパレル産業の動向とは?(写真はイメージです)
    アフターコロナにおけるアパレル産業の動向とは?(写真はイメージです)
  • アフターコロナにおけるアパレル産業の動向とは?(写真はイメージです)

さまざまな職種のあるアパレル・ファッション業界 全体の平均年収は3万円アップ

(パーソルキャリアの「クリーデンス」の作成)
(パーソルキャリアの「クリーデンス」の作成)

   はじめに、2022年のアパレル・ファッション業界全体の平均年収は、346万円で前年の343万円を3万円上回った。

   最も平均年収が高い職種は「マーケティング」は平均473万円で、前年と比べると1万円の上昇だ。次いで「MD(マーチャンダイザー)・バイヤー」は436万円で、前年と比べると6万円の上昇。同じく「営業・店舗開発」も436万円だが、こちらは前年比5万円の減少となった。

   クリーデンス事業責任者の荒木学氏は「『マーケティング』は、EC化の加速によりデジタルマーケティングの知見を持つ人材のニーズが高まっています。異業界からスキルのある人材を採用したいという企業の声も多く聞かれることから、年収が高い傾向にあると考えられます」と指摘している。

   続いて、前年との比較で平均年収が上昇した職種のうち、最も上り幅が大きい職種は「店長」で14万円の上昇(平均年収は394万円)。つぎが「MD・バイヤー」で、6万円の上昇(同436万円)。そして、「販売」は、5万円の上昇(同321万円)となった。

   平均年収が上昇した背景とは何か。同社によると、まず「店長」はコロナ禍での休業にともなう人材流出や採用活動の停止などの影響があったものの、2022年は行動制限の緩和で、店頭への客足が回復傾向にある。そうしたなか、「店長」をはじめとする店舗運営にかかわる人材不足が深刻で、そのための人材確保が急がれていることから、年収の引きげにつながったと見ている。

   商品の企画から生産・販売まで、一連の流れを取り仕切るブランドの要となる役割をはたす「MD(マーチャンダイザー)」は、同社の解説によると、ブランドの売上が年収や賞与に反映されやすいのが特徴だという。また、コロナ禍では、スポーツやアウトドアが流行したことから、スポーツアパレルの市場は飽和状態に。そこから抜きんでるために、デザイン・機能の両面で知見がある「MD」は評価が上昇しているようだ。これらの要因が、「MD」の平均年収アップにつながっている。

   「販売」は、店長と同様、コロナが明け、業績回復にともなう人材採用に目が向いているようだ。同社は「ホスピタリティの高い接客ができる、語学力がある、SNS活用に長けているなど、特定のスキルに秀でた『販売』人材の評価を見直す動きがありました」と指摘。客足回復に伴い人材獲得が急務で、平均年収の増加につながっているようだ。

平均年収...25歳~29歳320万円、30歳~34歳367万円、35歳~39歳396万円

   一方で、前年比で下がり幅が大きい職種は、デザインをもとに型紙をおこす「パタンナー」が27万円の減少(平均年収は307万円)。このほか、「生産管理/物流/貿易」が15万円の減少(同401万円)、「プレス/販促/VMD」は12万円の減少(同409万円)となった。

   同社によると、平均年収の下がり幅の大きかった「パタンナー」は技術職で、他の職種に比べて兼務がしづらい職種。そのため働く環境も整っており、自身のライフイベントにあわせて時短勤務を選択する人も多いことなどが、平均年収にも影響しているようだ。

   また、年齢別では、平均年収はどうなっているのだろう。25歳~29歳は8万円増加で、平均年収320万円。30歳~34歳は6万円増加で、同367万円。35歳~39歳は13万円減少で、同396万円となった。

   アパレル・ファッション業界を取り巻く状況について、クリーデンスの事業責任者・荒木学氏は、次のように説明している。

「2022年は、新型コロナ流行による店舗休業が売上減少や人材流出につながり、また人々の購買行動の変化によりビジネスモデルの変革を迫られた、2020年・2021年の2年間を取り戻す1年となりました。
現に、リブランディングや新業態の打ち出し、EC化率の増加、さらにはSNS活用などを強く推進したことで変革に成功し、コロナ前の売上を上回った企業も多くあります。それに伴い、人材獲得に投資できるようになったことや、昨今の『人への投資』や物価高による賃上げの流れから、業界ではたらく人の年収もアップしました」
(パーソルキャリアの「クリーデンス」の作成)
(パーソルキャリアの「クリーデンス」の作成)

   最後に、年代別の平均年収の図を見てみると、25歳~29歳、30歳~34歳では300万円~349万円がボリュームゾーンとなっている。かたや、25歳~29歳では400万円以上、30歳~34歳では450万円以上の人が前回に比べて増加したため、年収が底上げされている。

   なお、この調査は2022年1月から2022年12月までの間、「クリーデンス」の転職支援サービスに登録した人を対象とした。