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転機が訪れ、反転攻勢も近い?...東洋経済「逆襲の銀行」、ダイヤモンド「相続&生前贈与」、エコノミスト「半導体黄金時代」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

金利上昇で、銀行業界に春が訪れる? 各行の戦略とは?

   7月10日発売の「週刊東洋経済」(2023年7月15日号)の特集は、「逆襲の銀行」。長らく停滞を続けてきた銀行に、転機が訪れている。悲願の金利上昇が目前に迫り、反転攻勢も近いと期待が高まっているというのだ。

   低金利政策のもとでも、銀行各行は業務効率化や海外展開で利益を出し、三菱UFJファイナンシャル・グループ(FG)は、24年3月期に過去最高純益を予想するなど、好決算を見込んでいる。

   そうした中で、金融緩和政策が修正され、金利が上がれば、銀行にとって干天の慈雨となることは間違いない。各行の戦略をフォローしている。

   みずほフィナンシャルグループ(FG)は、住宅ローンを削減する方針を中期経営計画で打ち出した。木原正裕社長は、「金利競争が激しすぎる」と、住宅ローンに厳しい視線を注いでいたという。ネット銀行の台頭で、異次元の低金利に突入。新規案件では、黒字を確保するのも難しくなっていた。

   反面、成長を牽引するのは法人と海外だ。国内では従来の大企業に加え、中堅企業をサポートする部署を新設した。26年3月期に業務純益1兆円という目標を掲げている。

   三井住友FGの秘密兵器は、金融スーパーアプリ「オリーブ」だ。銀行口座への入出金や証券投資、カード決済、保険など、個人向けの金融サービスを1つのアプリに集約するものだ。

   三井住友のリテール部門は、業務粗利益の4割をカードなどの決済事業が稼いでいる。オリーブは融資というより、カード利用を促す仕掛けだ。6月にはカルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイントと共同で新たなポイントサービスを発表した。

   富裕層を除く個人取引は、原則としてオリーブに一本化し、既存店舗は最低限の人員で運営する「ストア」へ鞍替えし、年間約300億円もの経費削減を見込むという。

   ところで、長らく続いた低金利環境はいつ変わるのか。日本銀行が金融緩和政策を転換させる時期を予想している。

   日銀が最初に手をつけると考えられるのが、国債買い入れなどで長短金利を操作するYCC(イールドカーブコントロール)だ。23年後半にも長期金利の上限を再拡大するだろうというエコノミストに見方を紹介している。

   YCCの次は、いよいよマイナス金利の解除だ。現在、銀行が日銀に預けている当座預金の残高が一定水準を超えると、超過額に0.1%のマイナス金利が徴収される。早ければ24年にも解除されるという観測があるが、解除時期の予想にはばらつきがあるようだ。

   だが、金利が上昇しても貸出金利は上がらない、という指摘もある。日本総合研究所の大嶋秀雄主任研究員の「銀行員も顧客も、ほとんどが金利上昇局面を経験していない。顧客との関係維持を考えれば、従前の契約より高い金利を提示することは難しい」という見方を紹介している。

◆銀行業界で初任給の引き上げラッシュ

   銀行業界で初任給の引き上げラッシュが起きているという記事も目を引いた。

   三井住友銀行が2023年4月入行の大卒初任給を25万5000円へ引き上げたのをきっかけに、みずほ銀行は24年4月入行からの大卒初任給は26万円、三菱UFJ銀行も同25万5000円への引き上げを決めた。

   商社やコンサルティング会社に学生が流れることへの危機感からだが、横並び意識も拍車をかけているようだ。と見ている。

   ちなみに同誌の調べによると、銀行業界トップは、住信SBIネット銀行の30万円。実店舗を持たず、住宅ローンの審査もAI(人工知能)が行うという身軽さで、23年春に上場を果たしたばかり。ネット銀行だが、上位地銀と肩を並べる時価総額を誇るという。

   このほか、「1県1行」の地銀再編がじわりと加速している動きを取り上げている。低金利時代の終わりは、新たな金融環境をもたらすものと期待感がふくらんでいる。

2023年年末は「駆け込み贈与」のラストチャンス

   「週刊ダイヤモンド」(2023年7月15日・22日合併号)の特集は、「やってはいけない相続&生前贈与」。2024年にマンション節税と生前贈与という二大節税術に関わるルールが大改正される。ラストチャンスを生かす、仕組みを解説している。

   2023年度税制改正の4つのポイントを示している。

   1つ目は、相続財産に加算する生前贈与を、相続3年前から7年前へと延長することだ。これまでは生前贈与から4年以上長生きすれば、節税につながった。

   しかし改正後は、贈与から8年以上長生きしなければ節税にならなくなる。だから、改正前の23年12月末までは「駆け込み贈与」のラストチャンスとなる。

   2つ目は、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除の新設。3つ目は、孫・子供の配偶者への生前贈与は改正の対象外。4つ目は、教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与の特例は延長されること。「アメとムチが用意された」という相続を専門とする税理士の声を紹介している。

   今回の改正が損になるかどうかのボーダーラインの目安は「資産3億円」と専門家は見ているそうだ。

◆「タワマン節税」つぶしの全貌

   「タワマン節税」つぶしの全貌が、6月30日に明らかになった。

   国税庁がマンションの相続税評価の見直し案を公表。「マンションの評価額を、最低でも市場価格の6割の水準に引き上げる」というものだ。

   タワマン節税が流行したのは、相続税におけるマンションの評価額と、市場価格が著しくかけ離れていたからだ。

   一戸建ての場合、評価額と市場価格との乖離率は平均1.66倍だが、マンションは乖離率が平均2.34倍と高く、42%ものマンションが2.5倍以上の乖離率となっていた。この不公平の是正が目的だ。

   特集のタイトルにもなっている「やってはいけない対策」とはどんなものがあるだろうか、いくつかピックアップしよう。

・配偶者控除を利用して妻に自宅を生前贈与した
・自宅を相場より安く子供に売った
・孫名義の口座を作り自身で長年管理・預金していた
・借り入れをして空き土地にアパートを建てた
・相続財産を減らすために2世帯住宅を建てた
・親の死亡直前に親の口座から葬式代を引き出した
・満期の定期預金を配偶者名義で別銀行に預けた

   相続税の実地調査件数は年間6000件(21年)に上り、8割以上は追徴課税され、その平均額は886万円だという。相続税の計算方法とお得な控除についてまとめているので参考になるだろう。

生成AIが促す半導体需要

   「週刊エコノミスト」(2023年7月18日・25日合併号)の特集は、「半導体黄金時代」。チャットGPTに代表される生成AIの進化で、半導体需要は異次元の増加が期待されるという。

   国際技術ジャーナリストの津田建二氏の巻頭レポートが興味深い。

   生成AIは「半導体の起爆剤になる」と予想している。チャットGPTには数千個のGPU(画像処理プロセッサー)が学習や推論に使われているが、GPUの1000倍もの性能を持つ巨大なAIチップも登場し、周辺の機能を提供する半導体の需要も出てくると見ている。

   最先端の半導体を製造する5兆円の巨大プロジェクト「ラピダス」の行方について、電子デバイス産業新聞特別編集委員の津村明宏氏がリポートしている。

   2ナノメートルプロセス量産化を目指しているが、日本には現在40ナノメートル以降のプロセスがなく技術者がいないことから、否定的な意見が多い。しかし、津村氏は「今回がラストチャンス。日本の新たなチャレンジが始まったのだ」と肯定的にとらえている。

   最先端ロジック半導体を国内で量産するという決断を評価。北海道の千歳工場は周辺産業にも大きな波及効果をもたらすと期待している。

   チャットGPTは、サービス提供者側で非常に大きな電力を消費するため、GPUに代わる半導体の登場が待たれるという。半導体はまだまだ進化を続けそうだ。(渡辺淳悦)