中途採用、難しく...実施企業は大幅増も、過半数が「人材確保できなかった」

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   中途採用を実施する企業が大幅に増加するなか、その過半数の企業が募集しても人材を確保できない(未充足)状況であることがわかった。

   リクルート(東京都千代田区)の人と組織に関する研究機関、リクルートワークス研究所が、正社員の中途採用における求人動向を明らかにすることを目的に実施した「中途採用実態調査(2022年度実績、正規社員)」を、2023年7月5日に発表した。

   必要な人数を確保できなかった企業が多く、採用難度が高まっている。

中途採用実績、増加も業種別では傾向分かれる

   調査によると、2022年度(通期)の中途採用の実績は、2021年度の1社あたり1.31人から22年度の1.52人へと、前年度から15.3%増えた。コロナ禍の影響が落ち着き、景況感の見通しが回復したことによって、より積極的に採用するようになったとみられる。

   従業員規模別でみると、すべての規模で中途採用の実績が増えており、なかでも最も増えたのは従業員数が300~999人の規模の企業でプラス30.6%だった。次いで、1000~4999人の規模の企業でプラス26.1%と大きく増加している。

   また、2020年度から21年度にかけての増加率がプラス2.0%と微増にとどまっていた従業員5~299人の企業でもプラス11.8%と大きく増加しており、中途採用の加速の動きは大手だけでなく中小企業にも波及していることがわかる。

   ただ、業種別では傾向が分かれた。

   採用実績が減少した業種は、「小売業」のマイナス14.0%と、「医療・福祉」のマイナス8.1%。これらを除く業種では増加となり、とくに大きく増加した業種は「卸売業」の48.2%や「機械以外の製造業」の36.2%、「情報通信業」の33.5%だった。

   比較可能な2015年度からの対前年度増減率の推移をみると、前年度に続き採用実績はプラスとなり、過去最高値だった。19年度からコロナ禍の20年度にかけて、中途採用の実績は一時的に減少したが、21年度で回復。22年度は採用難度が高まっていることがわかる。【下記のグラフ1を参照】

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グラフ1 中途採用の実績(対前年度増減率の推移。リクルートワークス研究所調べ)

経験者・未経験者ともに、採用人数が回復

   また、過去8年間における経験者と未経験者の採用実績人数をみると、2022年度は経験者の採用人数が1社あたり0.99人と、前年度より0.19人増加。未経験者は0.61人と前年度より0.07人増えた。

   未経験者比率は2.1%ポイント減少。コロナ禍後の景況感の回復を経て、経験者の採用が増加傾向にあることがわかる。

   従業員の規模別にみると、5~299人の企業で未経験者比率が42.5%と最も高かった。採用力が従業員規模の大きい企業と比べて低く、未経験者で人材を補っている可能性がある。

   リクルートワークス研究所によると、こうした傾向は前年度と同様という。また、未経験者比率の前年度との差は、すべての従業員規模で横バイもしくは低下。とくに従業員5000人以上の企業ではマイナス26.2%ポイント(2021年度38.9% → 22年度12.7%)と、他の従業員規模に比べて大きく減少した。

   業種別では、未経験者比率が減少した業種が多くなっており、なかでも大きく減少した業種は「建設業」で、マイナス20.0%ポイント(21年度53.0% → 22年度33.0%)となった。

   一方、最も大きく増えた業種は「小売業」で、プラス17.4%ポイント(同45.3% → 同62.7%)。次いで、「運輸業」のプラス8.4%ポイント(同30,9% → 同39.3%)だった。

   さらに、2022年度下半期の中途採用活動の実施割合をみると、「実施した・実施中」の企業は全体では75.6%、「実施しなかった」企業は24.4%だった。「実施した・実施中」の企業は、21年度下半期に3年ぶりに増加となり、引き続き増えた。

   リクルートワークス研究所によると、2019年度下半期を境に企業の採用活動が変化。20年度が採用実施では「底であった」ことがわかるという。

   従業員の規模別でみると、5000人以上の企業で「実施した・実施中」が90.3%と最も高い。最も低いのは、5~299人の企業の66.4%だった。前年度の傾向と同様に、従業員規模が大きいほど実施割合が高かった。

   「実施した・実施中」の業種別では、「機械器具製造業」(84.2%)や「運輸業」(81.3%)、「医療・福祉」(82.1%)をはじめ、さまざまな業種で高かった。前年度は相対的に割合の低かった「金融・保険業」では2021年度の48.0%から22年度は57.1%へ、「飲食店・宿泊業」では56.9%から71.1%へと高まった。

   コロナ禍からの景況感の回復や構造的な人手不足から、各業種とも中途採用に積極的に取り組んでいる。

必要な人数を確保できなかった企業が多く...

   調査によると、2022年度下半期の中途採用で必要な人数を「確保できた」と答えた企業は45.8%。「確保できなかった」と答えた企業は52.7%だった。「確保できなかった」と答えた企業は前年度からプラス7.3%ポイントと増えた。

   「確保できた」企業の割合と「確保できなかった」企業の割合の差(中途採用確保D.I.)は、全体でマイナス6.9%ポイントとなり、「確保できた」企業の割合を「確保できなかった」企業の割合が上回った。比較可能な2013年度下半期以降、最も低い値で、人材の採用難度が高まっていることがうかがえる。

   「中途採用確保D.I.」を従業員の規模別にみると、すべての従業員規模でマイナスとなっており、「確保できなかった」企業が「確保できた」企業を上回っている。

   とくに、従業員1000~4999人の企業でマイナス13.4%ポイント、300~999人企業でマイナス11.3%ポイントと低水準となった。

   さらに、「中途採用確保D.I.」を業種別にみると、傾向は業種によって分かれているものの、大きくマイナスとなった業種が多くみられた。とくに低水準となったのは「運輸業」のマイナス23.8%ポイント、「飲食店・宿泊業」がマイナス32.1%ポイント、「医療・福祉」はマイナス21.3%ポイントだった。

   なお、調査は従業員5人以上の全国の民間企業7200社を対象に、2023年1月26日~3月2日に実施した。調査項目は、2022年度における中途採用状況と2022年度下半期における人数確保の状況など。4140社(回収率57.5%)から、電話・FAXで回収した。2021年度の数値は、「中途採用実態調査(2021年度実績、正規社員)」を参考。

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