対話型AI(人工知能)「ChatGPT」が話題にならない日はなくなったが、ほかにどんな対話型AIサービスが人気なのだろうか。
モバイル専門の市場調査会社「MMD研究所」(東京都港区)が2023年6月7日に発表した「ChatGPT関する調査」によると、実は、「ChatGPT」より頻繁に仕事や学習に利用されているサービスがあるという。
それは、どのサービスなのか?
毎日使う人が多いのは「Microsoft Bing AI」と「LINE AIチャットくん」
15歳から69歳の男女5000人を対象としたMMD研究所の調査では、まず、対話型AI(人工知能)サービスについて、話題沸騰の「ChatGPT」に加えて、日本でも人気の「Microsoft Bing AI」と「LINE AIチャットくん」の3つに絞って、「知っているか、利用したことがあるか」と聞いた。
すると、認知度と利用経験ともにトップは「ChatGPT」で、半数近くの人が知っており、10.0%の人が利用していた。一方、「Microsoft Bing AI」(6.1%)と「LINE AIチャットくん」(5.8%)も、「ChatGPT」には及ばないものの、利用経験では迫る勢いだった【図表1】。
「ChatGPT」の利用経験を職業別に聞くと、「会社勤務・管理職」(23.0%)の割合が最も多く、次いで「会社経営・役員」(22.5%)、「学生」(18.2%)、「自由業・フリーランス」(16.5%)、「公務員・教職員・非営利団体職員」(16.0%)と続いた。
知名度抜群の「ChatGPT」の人気が一番高いのはたしかだが、3つのAIサービスの利用頻度を聞くと、興味深い結果が出た。
各AIサービスを1か月以内に利用したことのある人を対象に、利用頻度を聞くと、「ほぼ毎日」と答えたのは「Microsoft Bing AI」(40.6%)が最も多く、次いで「LINE AIチャットくん」(37.2%)となり、「ChatGPT」(23.7%)は最下位となった【図表2】。
これは、「週に2~3回程度」「週に1回程度」を合わせた割合でも同じで、「ChatGPT」の利用度は一番低いのだ【再び図表2】。
さらに、3つのAIサービスの利用目的を聞いても、同じ傾向が表れた。たとえば、「仕事に役立てるために利用」と「学習に役立てるために利用」の2つの項目を見ると、トップは「Microsoft Bing AI」で、2位は「LINE AIチャットくん」、「ChatGPT」(23.7%)は最下位だ【図表3】。
「ChatGPT」がダントツでトップの利用目的は、「特に利用目的がないが利用(話題になっているからなど)」である。また、「目的があり、仕事・学習以外で利用」も僅差で1位だ。【再び図表3】。「ChatGPT」の場合は、話題が沸騰しているため、とりあえず何でもいいから使ってみたいということなのだろうか。
「ChatGPT」はゴルフクラブの握り方、スイングのコツを教えてくれる
その「ChatGPT」を仕事に役立てるために使っている人に、どのようなシーンで利用しているかを聞くと(複数回答可)、「情報収集をするとき」(34.4%)が最も多かった。次いで「アイデアだしをしているとき」(30.5%)、「文章や動画の内容を要約して確認したいとき」(24.7%)、「リストや表を作成するとき」(21.4%)、「電子メールを作成するとき(日本語)」(同)と続いた。【図表4】
では、こうして「ChatGPT」を仕事に使い、「期待どおり」、あるいは「期待以上」の効果が得られたのだろうか。
シーン別に期待した回答が得られたかを聞くと、「期待を上回る回答を得ることが多い」と答えた割合が高かったのは、「文章や動画の内容を要約して確認したいとき」(92.1%)が最も高かった。
次いで「外国語の文章を翻訳したいとき」(87.9%)、「電子メールを作成するとき(日本語以外)」(79.2%)、「リストや表を作成するとき」(78.8%)、「電子メールを作成するとき(日本語)」(75.7%)と続いた【図表5】。
「ChatGPT」を仕事や学習で使っている人たちからは、こんな称賛のコメントが寄せられた。
「外国語の翻訳の際に、言い回しやニュアンスの違いを学んでいる」(男性会社員)
「営業を拡大し、効率よく展開するための視点や方法の参考になっている」(男性会社員)
「複数言語間の同時翻訳に役立った」(女性会社経営者)
「企画書の叩き台の作成に役立った」(男性会社員)
「数学のリーマン予想や、量子力学について参考になった」(フリーランス)
「美術のデザイン案や、反省文の作成の1例に」(女子学生)
また、趣味や遊びに役立てた人たちからは、こんな感謝のコメントが寄せられた。
「ゴルフクラブの握り方や、スイングのコツを教えてもらった」(男性農林漁業)
「快気祝いと、見舞いの返礼文を作ってもらった」(男性会社員)
「物語を作ってもらった」(女性無職)
「季節のイベント情報や、行楽のアイデアを出してもらった」(女性無職)
「スマホの使い方を教わった」(男性無職)
「自分にあう自転車を選んでもらった」(男性自由業)
「おしゃべり(しりとり)を楽しんだ」(男子学生)
ずいぶん、いろいろと役立っているようだ。
調査は2023年5月8日~10日、全国の15歳~69歳の男女5000人にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)