半導体材料で世界トップシェアのJSRを、政府系ファンドのJICが買収 国際競争生き残りへ業界再編狙う

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過去の案件にルネサス、JDI、JOLED... 「退出するべき企業」の延命はもうしないというが...

   JICは2018年に産業革新機構(INCJ)を改組するかたちで発足した経済産業省所管の官民ファンド。民間だけでは背負えない投資リスクを官民でとり、新産業を育成するという目的は、INCJ時代から基本的に変わらない。

   JICの出資金は3700億円弱で、大半は政府が財政投融資特別会計(投資勘定)を通じて出し、一部、大手企業も出資している。

   個別企業への大型出資は前身のINCJ時代のもので、新産業育成とはいいつつ、経営不振に陥った企業を救済するかたちで資金を注入した例が目立つ。半導体大手のルネサスエレクトロニクスや液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)、有機ELディスプレーパネル製造のJOLED(ジェイオーレッド)などが代表だ。

   ルネサスでは、業績が上向き、段階的に資金を回収している。だが、JDIは赤字が続き、再建途上のまま。JOLEDは2015年にINCJが主導し、JDI、ソニー、パナソニックの有機ELディスプレーパネル製造事業を統合して発足したが、23年3月に民事再生法の適用申請に追い込まれた。

   JICに改組してからは、「退出するべき企業の延命にカネは出さない」方針を明確にしている。一時、東芝の買収にも名乗りを上げたが実現せず、JSRの買収が成功すれば、JICとしての大型案件第1号になる。

   今回の買収は、業界再編・技術力向上など前向きな投資で、「INCJ時代の企業救済型とは違う」(経産省筋)。ただ、たとえばJOLEDの場合、低コスト有機ELパネル製造技術が一時もてはやされながら、実用化できずに破綻している。同列に比べられないとはいえ、政府の後ろ盾だけで事業が改善・発展するものではない。

   政府資金の安易な出動が投資の効率を損ねていないか、買収後の経営陣は厳しく問われることになる。(ジャーナリスト 済田経夫)

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