各国が国内の半導体技術の強化に奔走 JSRは非上場化で意思決定を速め、大胆な事業戦略を推進
半導体は自動車や電機をはじめ幅広い分野で使われ、いまや国民の生活に欠かせない「戦略物資」だ。
とくに半導体をめぐる米中対立の激化で、世界各国で半導体は経済安全保障の根幹にかかわる重要物資になった。
世界が半導体技術の産業基盤の国内確保に走り、日本もTSMCが熊本県に建設する工場に21年度補正予算で最大4760億円の拠出を決定している。
さらに、22年度第2次補正予算では、次世代型開発や供給網強化などの半導体支援に計約1兆3000億円を計上。トヨタ自動車などが出資する次世代半導体製造の共同出資会社「ラピダス」に、計3300億円の助成も決めている。
こうした流れの一環で、現状で世界的に強みを持つフォトレジスト分野の優位をさらに強固にしようというのが、今回のJSR買収だ。JSRのエリック・ジョンソン社長は6月26日開いたオンラインの記者会見で「(半導体素材業界の)再編を先導したい」と明言した。
JSRは21年には約450億円で同業の米企業を買収する一方、祖業だった合成ゴム事業を売却するなど、経営資源を半導体関連に集中させてきた。非上場化によって意思決定を迅速化し、業界再編を含め大胆な事業戦略を推し進めたい考えだ。