半導体素材大手のJSRが、経済産業省所管の政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)に買収されることになった。経済安全保障上の戦略物資である半導体材料の競争力の維持・強化に向け、JICの資金力と影響力を後ろ盾に業界再編に乗り出す方針だ。
だが、政府が関わった再編には失敗に終わった例も多く、狙い通りの成果を上げられるのだろうか。
JIC、12月下旬にTOB始める予定 買収総額は1兆円規模か
JICが2023年6月26日、TOB(株式公開買い付け)を通じ、東証プライム市場に上場するJSRの全株式の取得を目指すと発表した。
買い付け価格は1株当たり4350円で、買収が明らかになる直前の6月23日終値に対するプレミアム(上乗せ幅)は35%。JSRはJICの発表を受け、TOBに賛同を表明し、同社の株主に応募を推奨した。
JICは12月下旬をメドにTOBを始める予定で、成立すれば、JSR株は上場廃止になる。買い付け総額は9039億円、純有利子負債を含んだ買収総額は1兆円規模に達する。
JICはJSRを買収するための新会社へ5000億円程度を出資し、みずほ銀行が4000億円強を融資する。出資と融資の中間的な優先株や劣後ローン計1000億円を複数の銀行が引き受ける。