「一流の人との共通言語」を増やす
「一流の人との共通言語」を増やせば、自分の価値が高まる、という指摘も教訓に富んでいる。自分の専門とする分野の一流の人に「言葉」を学び、その言葉が使えるようになると、一流の人に一目置かれるという。
井上さんはあらゆる機会を使って、「言葉」に耳を傾け、学んできたそうだ。専門の歯学はもちろん、経営者のDVDを見たり、講演会に参加したりと、かなりの投資をした。
話の内容はさることながら、立ち振る舞い、話し方、間の取り方、服装など講師の所作も吸収しようとした。無料の動画サイトの利用も進めている。
「自責の習慣」のアクションリストも参考になりそうだ。いくつか抜粋しよう。
・すべてを自分の責任と考える
・問題改善シートを作る
・8対2で相手を優先する
・人を紹介する
「礼儀礼節」の基本は、あいさつと身だしなみだ。身だしなみでは、服装選びも重要だ。
1 会社の特性に合った服装にする
2 迷ったらスーツにネクタイ
3 場に合った服を選ぶ
4 清潔感を大切にする
また、「今度、お食事でも」という食事の約束を社交辞令で終わらせず、ワンランク上の礼儀に変える返信、という項目も参考になりそうだ。
井上さんは、「この人との縁は深めておきたい」と思った場合、都合のよい具体的な日程を尋ねるメールを返信する。すると、必ず相手はアクションを起こしてくれるという。具体的な日程調整までもっていくことで、人との縁が広がっていくのだ。
「立ち直る(失敗)」に関しては、メンタル落ちから抜け出す3ステップを挙げている。
1 メンタルが落ちてきたと思った原因を思いつくだけ机上に並べる
2 一つひとつの問題に向き合う
3 いまの自分にできることに頭をシフトさせ、行動に移す
イラッとしたときは、「ここは器を大きく」と心でつぶやくといいそうだ。自分の気持ちを抑えるには努力が必要だ。しかし、その見返りもあるという。
「自愛」の章では、「気がすすまない人との付き合い」をやめる、「性に合わない仕事」をやめることを勧めている。自分のことを愛せる生き方を目指しましょう、と励ましている。
井上さんは、本来手先はあまり器用ではなかったが、可能な限り多くの医療系セミナーに通い、できる限りの時間を練習に費やした結果、手技が褒められるほど上達したそうだ。成長への強い意欲がそれを支えた。
成長するためには、自分がやっている業務、仕事の内容について、常に「どういう価値があるか」問うことが大切だ、と書いている。
ちなみに、井上さんは週の前半は自宅やクリニックのある北海道の帯広で過ごし、後半は出版の打ち合わせやセミナーのある東京のホテル住まいという生活を30年近く続けてきたそうだ。
常に成長しようという、その生き方に感銘を受けるとともに大きな刺激を受けた。(渡辺淳悦)
「一流の人間力」
井上裕之著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
1760円(税込)