朝夕の通勤列車は大混雑で、新型コロナウイルスの感染拡大前に戻ってしまったように見える。
2023年5月から新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したことが大きなきっかけとなり、オフィス回帰が広がっているようだ。
コロナ禍で活用が急拡大したリモートワークやテレワークは、アフターコロナによって再び減ってしまうのだろうか。
帝国データバンク調べ、6割超の企業「コロナ前とほぼ同じ働き方に」 社員の一体感・公平感も大事
調査会社の帝国データバンクは、新型コロナが「5類」に移行するのを前にした3月後半、全国の2万7628社に働き方の変化に関するアンケート調査を実施し、1万1428社(41.4%)から回答を得た。
それによると、「5類」への移行後、従業員の働き方は「新型コロナ前と同じ状況になる」と回答した企業は39.1%と4割近くに上った。コロナ前と完全に同じ状況にならなくても、8割程度はコロナ前に戻るとの回答は22.5%に上り、全体の6割超はコロナ禍前とほぼ同じ働き方になるという回答だった。
業種別で見ると、この傾向は「農・林・水産業」や「建設」などで多く、従業員数別では人数が少ない企業ほど多かった。
その理由についての回答では、「工場勤務はコロナ禍でも出勤しなければならなかった。中小企業は社員の一体感や公平感が大事で、一部だけリモート勤務というわけにはいかない」などの声があった。
コロナの流行期は感染防止のため仕方なくリモートやテレワークを導入したが、緊急事態が去った後は元の働き方に戻した方がいいと判断した企業は少なくないようだ。
在宅勤務では「アイデア出ない」業務に支障 「出社せざるを得ない」嘆く若手も
一方、リサーチサービスを提供している「LINEリサーチ」が5月に全国の15~69歳の男女計1万人超を対象に行った調査によれば、職場でテレワークを義務づけたり、推奨したりしていると答えた人は14%に過ぎなかった。前回調査(21年9月)は30%で、大きく減少したという。
もともと、コロナの感染拡大が続いているさなかでも、IT企業を中心に在宅勤務から出社を基本とする働き方に戻す動きは出ていた。
「在宅勤務では社員同士のコミュニケーションが希薄になり、多彩なアイデアが生まれてこなくなる」(IT関係者)など、業務への支障を懸念したからだ。さらに最近では、「上司が出社するよう求めるから出社せざるを得ない」と話す若手会社員も多い。
大手企業の多くではリモートやテレワークの態勢がすでに整備されており、コロナ前の働き方に完全に戻ることはないだろう。
しかし、中小企業などの行方は不透明だ。
企業関係者の中には「アフターコロナの世界では、大企業と中小企業との働き方の差が広がっていく可能性がある」との見方も出ている。(ジャーナリスト 済田経夫)