できる営業パーソンの「コミュ力」とは?...「父と娘の会話」見習おう! 部下&他部署との信頼関係づくりには「コミュニケーションの3原則」を(大関暁夫)

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   営業管理者がおこなう管理の大前提は、営業職が社内外のコミュニケーターである以上、とにかくコミュニケーションを通じて担当者や他部署との信頼関係を築くことです。

   それを実現するための基本セオリーが、「コミュニケーションの3原則」になるのです。

信頼関係の醸成に不可欠なのは、コミュニケーションの「量」

   「コミュニケーションの3原則」その1は、「コミュニケーションは量が質をつくる」です。

   この場合の「質」とは、とりもなおさず担当者や他部署との信頼関係そのものです。すなわち、部下や他部署の管理者との信頼関係を築くためには、まずは絶対的なコミュケーションの量を確保することが重要なのです。

   人間関係づくりにおけるコミュニケーションの重要性は、家庭内での父親と娘の関係が分かりやすい例かも知れません。

   毎日仕事で家に帰るのが遅い、土日もゴルフやら飲み会やらで、なかなか娘と直接コミュニケーションをとる時間が取れない父親は、娘の日々の生活が見えにくくなって、話しかけにくさも出てお互いの間に見えない壁が出来てしまう、といったケースはよくあることでないでしょうか。

   娘が母親とは信頼関係が保てているのに、父親との距離感が大きくなって家庭内で疎遠になってしまったりするのは、同性であるか否かの問題ではなくコミュニケーションの絶対量の問題である場合が大半なのです。

   部下管理においても、全く同じです。日報などの書面でのやりとりだけでなく、一日に最低1回は部下の顔を見て、一人ひとりと直接対話をすることが信頼関係を作る上で大切です。

   基本は毎日、担当者が営業活動から戻ってきたら、今日はどこでどのよう話をして、何がうまくいって何がうまくいかなかったのかを、しっかりと聞いてあげましょう。

   それによって的確な指導や支援が可能になり、管理者が担当者の営業活動における的確な伴走役を務めることで、部下からの信頼感を得るとともに部門の成績向上につながるのです。

   他部署との関係もしかりです。日常的な対話を心掛けお互いの状況を共有しあうことで、自己セクションの都合優先での不要な衝突や協力体制の崩壊が、未然に防げます。

   たとえば、メーカーなどで、営業部門と技術・開発部門との折り合いが悪いケースはよくある話です。まずは営業部門サイドから、接点を増やすべく積極的に動くことが大切です。それには、部門管理者同士の円滑なコミュニケーション確立がカギを握っていると言えます。

   担当者が動きやすくなるためにも、他部署管理者とのコミュニケーション絶対量の確保に努めてください。

会話術や操縦術を駆使するよりも、部下を思う気持ちを持って

   「コミュニケーションの3原則」その2は、「コミュニケーションはSKILLよりWILL」です。SKILLとは会話のテクニック、WILLとは意思すなわち相手への気持ちです。

   先の父と娘の例では、父のあるべきWILLは「娘の幸せを願う」気持ちで会話することであり、部下との対話でのあるべきWILLは、部下に対して「育ってほしい」との思いで話をすることなのです。

   「この流れで話をすれば、部下が従わざるを得なくなるだろう」などという会話術や操縦術を駆使するよりも、部下を思う気持ちを持って接することの方が信頼関係をつくるうえでは数段効果的だということです。

   逆に、部下が上司である管理者の自分に対する言葉を聞いて、「管理者自身の保身」や「管理者が自身の評価を気にする姿勢」ばかりを感じるなら、管理者への信頼感は損なわれるでしょう。さらに、その言葉が必要以上に感情的であったなら信頼関係は完全に崩壊します。

   担当者が、管理者は自分の成長を思って言ってくれているのだと感じることで、管理者に対する信頼感は強固になり、営業モチベーションも上がるのです。

   他部署とのコミュニケーションにおけるあるべきWILLは、「一緒に自社をより良い会社にしたい」との思いを持って他部署に話しかけることです。自己の部署だけの利益や都合でモノを言っていると相手が感じるならば協力体制が構築できないばかりか、結果的に営業活動の足を引っ張ることにもなるでしょう。

   ですから、お互いに知恵を出し合って、どうしたらもっと良い会社になるのかを念頭に相談し、協力しあう姿勢を忘れないことが大切です。

一方的に指導するのではなく、「自分の言葉」で考えを表明させる

   「コミュニケーションの3原則」その3は、「コミュニケーションは話すより聞く」です。

   コミュニケーション上手の基本は、聞き上手です。父と娘の会話でも、一方的に父親が娘に話しかけてもそれでは娘を思う気持ちが伝わりにくいばかりか、むしろ説教がましくなって、逆効果だったりします。

   娘を思う気持ちを持って話を聞き出してあげることで、親身な気持ちが伝わり娘も父親に特に信頼感を持って接してくれるようになるでしょう。

   対担当者コミュニケーションも同様です。どんな場面でも一方的に指導するのではなく、基本は担当者に質問することで、「自分の言葉」で考えを表明させることが、大切です。

   特に、担当者が失敗した時、クレームを受けた時などは要注意です。このような場面では、叱責や注意というかたちで一方的な指示をしがちですが、「どうしてそうなったのか」「同じミスを起こさないためにどうしたらよいか」等を質問して、自ら考えさせ、言葉にさせることが成長につながります。特にマニュアルの無い営業の世界では、このやりとりが一層重要なのです。

   また、他部署との関係では、自部門からの主張ばかりしていては、結局平行線をたどりがちになります。

   まずは自社のおかれた状況を客観的事実として共有したうえで、相手の事情を聞き出しつつ、お互いにどのように歩み寄ったら会社にとって最善の策になるのかを念頭に「相談」する姿勢が大切です。

   営業活動を円滑にすすめるためには、社内の部門間での融和は不可欠です。「聞くコミュニケーション」を駆使して、この点をしっかり調整しましょう。【つづく】(大関暁夫)

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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