「歴史的な春闘賃上げ効果」はどこに? 5月実質賃金1.2%減、14か月連続マイナス...エコノミストが指摘「実質賃金下落は、あと1年以上続く」

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「労働生産性を高めないと、実質賃金下落はいつまでも続く」

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家計のやりくりが大変だ(写真はイメージ)

   「実質賃銀の下落は、今後1年以上続くのではないか」と見るのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏はリポート「実質賃金が上昇に転じるのはまだ1年以上先か」(7月7日付)のなかで、消費者物価上昇率の今後の見通しを示したグラフ【図表2】を示しながら、まず、連合が公表した春闘最終集計の数字に疑問を呈した。

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(図表2)消費者物価上昇率の見通し(野村総合研究所の作成)

   連合が公表したのは「定昇込みの平均賃上げ率はプラス3.58%、賃金の内訳を明示している組合でのベースアップ率の平均はプラス2.12%」だが、近年は賃金の内訳を明示しない組合が増えているため、ベア率の平均値の信頼性が低下しているという。木内氏はこう指摘する。

   「ベア率、そして春闘の結果を十分に反映した所定内賃金の上昇率は、ともに5月分のプラス1.8%程度と考えられるのではないか。その場合、消費者物価上昇率が前年比プラス2%を割り込まないと、実質賃金の下落は終わらない」

   【図表2】を見ると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率がプラス2%を下回るのは2024年8月ごろだ。

   一方、今後、消費者物価上昇率が低下していくことで、来年の春闘での賃上げ率は、30年ぶりの高水準となった今年を下回る可能性が高い。来年の春闘で参照される消費者物価の最新値は、今年の半分程度になるからだ。

   そこで木内氏は、来年春闘でのベア率はプラス1%強程度と予想する。それが所定内賃金に反映され、実質賃金がマイナスを脱するためには、さらに消費者物価上昇率が低下してプラス1%を下回る必要が出てくる。そのタイミングは2024年10月ごろになるという。あと、1年3か月も先だ。

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財布が軽くなる...(写真はイメージ)

   木内氏はこう結んでいる。

「持続的に賃金、物価上昇率が高まるためには、実質賃金上昇率と深く関わる労働生産性の向上が必要だ。消費者物価上昇率が2%程度で安定していた1990年代初めには、労働生産性のトレンドはプラス3%超であったのに対して、現在はプラス0%台であることを踏まえると、現状は、賃金上昇を伴う形での持続的な2%の物価上昇が実現する経済環境とはかけ離れている。
リスキリング、労働市場改革、インバウンド需要のさらなる喚起、少子化対策などを通じて、経済の潜在力を高める努力を続けない限り、持続的な賃金、物価の好循環は見えてこない」

(福田和郎)

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