「物価上昇圧力が続き、個人消費が息切れする」
こうした結果をエコノミストとはどう見ているのだろうか。
ヤフーニュースコメント欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の小林真一郎氏が、
「現金給与総額(1人当たり賃金)は、4月の前年比0.8%増に対し同2.5%増に伸び率が高まりました。このうちベースアップに連動する一般労働者の所定内給与の伸び率も、4月の同1.4%増から2.2%増に拡大しました。春闘の結果が反映されることで注目された賃金上昇率ですが、4月時点では十分に反映されず、時間差をおいてようやく反映されてきました」
と説明。先行きの見通しについては、
「6、7月には夏のボーナスが支給されますが、企業業績の改善を反映して堅調な増加が見込まれており、賃金上昇率はさらに高まる可能性があり、個人消費へのプラス効果が期待されます。
しかし、実質では同1.2%減と依然マイナスの状態です。食料品等の値上がりが続いていること、最近の円安で輸入物価が再び上昇する可能性が高いことから、物価上昇圧力の強い状態が続くと予想されます。このため年内に実質賃金がプラスに転じることは厳しく、いずれ個人消費が息切れするリスクがあります」
と、年内いっぱい実質賃金のマイナスが続くとした。
同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、
「ヘッドラインの数字ほど賃金は弱くないと言えるでしょう。というのも、今回の平均賃金は、賃金水準の低いパートタイム労働者比率の上昇がかなりの押し下げ要因となっているからです。一般労働者とパートタイム労働者に分けて名目賃金を見れば、それぞれ前年比3.0%、3.6%と久方ぶりに3%を超えており、実質賃金も依然としてマイナスとはいえ、それぞれ前年比マイナス0.7%、マイナス0.2%とヘッドラインより下げ幅は縮小します」
と指摘。その一方で、
「ただ、特に一般労働者の賃金押上げ要因がボーナスなどの特別給与によるところが大きいので、来年度以降もこの賃上げが続くかは、まだ慎重に見る必要があるかもしれません」
と、賃上げ効果に楽観は禁物との見方を示した。