過労死等に関する労災認定が12.5%増加 労災請求・支払い件数も大幅増...請求の圧倒的多数は、精神疾患が原因(鷲尾香一)

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精神疾患は、時間外労働の時間の長さよりも、精神的な苦痛が原因に

   労災請求の圧倒的な多数を占めるのが、精神疾患によるものだ。

   2022年度の請求件数は2683件で前年度比337件(14.4%)の増加、このうち未遂を含む自殺の件数は同12件(7.0%)増の183件となっている。支給決定件数は710件で前年度比81件(12.9%)の増加し、このうち未遂を含む自殺の件数は同12件(15.2%)減の67件だった。

   脳・心臓疾患では、2021年度は請求件数、死亡での請求件数、支払い決定件数、死亡での支払い決定件数のいずれもが減少したが、精神疾患では2021年度から自殺での支払い決定件数以外は2020年度から増加に転じており、2021年度も同様の傾向となっている。(グラフ3)

   業種別では、労災の請求件数は「医療、福祉」が624件と圧倒的に多く、このうち「社会保険・社会福祉・介護事業」が327件を占める。次いで、「製造業」392件、「卸売業、小売業」383件の順となっている。支給決定件数は「医療、福祉」が164件で、このうち「社会保険・社会福祉・介護事業」で85件を占めている。「製造業」は104件、「卸売業、小売業」は100件で、ここまでが100件を上回っている。

   年齢階層別では、請求件数は「40~49歳」が779件、「30~39歳」が600件、「50~59歳」が584件の順で、支給決定件数は「40~49歳」が213件、「20~29歳」が183件、「30~39歳」が169件の順となっている。精神疾患では脳・心臓疾患よりも若い年齢層が多いことが特徴的だ。

   時間外労働(1か月平均)では、支給決定件数は「20時間未満」が87件で最も多く、次いで「100時間以上~120時間未満」が45件となっている。支給決定では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が147件ともっとも多く、精神疾患では時間外労働の時間の長さよりも、精神的な苦痛が原因となっていることが明らかだ。

   支払い決定となる認定率では、脳・心臓疾患での認定、脳・心臓疾患で死亡での認定、精神疾患での認定は前年度を上回っているものの、精神疾患での自殺による認定は前年度から4.1ポイント低下している。(グラフ4)

   労災の認定の状況をみると、日本では時間外労働に代表される肉体的な過労死よりも、精神的な苦痛による精神疾患が原因となっていることは明確だ。健康的に仕事ができる環境を作っていくことが労災を減少させるための重要なカギとなっている。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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