新型コロナウイルスが5類に移行し、全国の夏祭りや花火大会が再開・規模拡大しており、コロナ禍明けの活気が戻ってきているようだ。
そんななか、「祭りの力で人と町を元気に」をミッションに掲げているマツリズム(東京都文京区)は2023年7月4日、コロナ明けを背景とした「祭りに対する意識調査」を発表した。
調査によると、「お祭りはなくなってはいけないものだ」(そう思う:27%、ややそう思う:47%)と74%の人が実感している反面、お祭りへの参加意欲は「参加したくない」(コロナ以前と変わらず参加したくないと思う:46%、コロナ以前より参加したくないと思う:19%)と思う人が65%と過半数を超えている。
理由は、お祭り参加の懸念事項として「感染リスクが残っている」(32%)、「人ごみに慣れていないため不安」(16%)などが上がっており、安心してお祭りに参加するためには工夫が必要になりそうだ。
「子どもにお祭りに参加してほしい」69% 理由は「体験学習の良い機会」「他の地域と交流してほしい」「伝統を感じてほしい」
この調査は、2023年6月3日から5日までにかけて、全国の20歳から60歳の男女800人から有効回答を得た。
はじめに、「祭りはなくなってはいけないものだと思いますか?」と質問した。すると結果は、「ややそう思う」(47%)、「そう思う」(27%)、「あまりそう思わない」(17%)、「そう思わない」(9%)となった。「そう思う」と「ややそう思う」をあわせた「祭りはなくなってはいけないと思う人」は「74%」に上ることがわかった。
また、地域別で集計すると、九州沖縄地方が「祭りはなくなってはいけないと思う」(そう思う:39.2%、ややそう思う:47.1%)であわせて「86.3」を占め、全国で一番高い割合になった。
次いで、中国四国地方が「そう思う」は「26.2%」、「ややそう思う」は「50.8%」であわせて「77.0%」。
関東地方が「そう思う」は「29.2%」、「ややそう思う」は「44.7%」であわせて、「73.9%」という結果になった。
一方で、「祭りはなくなってはいけない」に対して「そう思う」の割合が一番低いのが「北海道東北地方」で「11.2%」となり、ほかの地域よりも低い水準だ。
続いて、コロナ明けに「祭りが再開されることについて賛成ですか?反対ですか?」と聞くと、「賛成」(32%)、「どちらかと言うと賛成」(35%)をあわせて「67%」となり、「反対」(4%)、「どちらかというと反対」(7%)をあわせて「13%」となった。「どちらともいえない」は「22%」を占めた。
結果を見ると、コロナ明けにお祭りを開催に好意的な人は「67%」程度を占めた一方、「どちらとも言えない」と判断に困っている人も2割程度存在するらしい。
つぎに、「子どもに祭りに参加してほしいと思いますか」と聞いてみると、「そう思う」(26%)、「ややそう思う」(43%)で、過半数を超える「69%」の人が子どもを祭りに参加させたい意向があるようだ。
さらに、「そう思う」「ややそう思う」の人に理由を聞いてみると、「地域の伝統や日本の文化を体験してほしいから」が「66.5%」、「子ども自身の楽しみや体験学習の場になるから」が「54.6%」、「他の地域の子供たちとの交流が深まるから」が「46.5%」という順になった。文化学習や体験学習、他地域との交流など教育的な効果を期待していることがわかる。
外出自粛期間を経て、祭りへの参加意欲は? 「参加したくない」は65%...40代以降が顕著に
一方で、「コロナ禍で外出自粛期間を経て、祭りへの参加意欲はどのようになりましたか?」と質問した。
その結果、「コロナ以前より参加したいと思う」は「11%」、「コロナ以前と変わらず参加したいと思う」は「24%」、「コロナ以前と変わらず参加したくないと思う」が「46%」、「コロナ以前より参加したくないと思う」は「19%」を占めた。最多は、「コロナ以前と変わらず参加したくないと思う」の「46%」という結果になった。
2021年調査と比較すると、全体で参加に意欲的な層は減少しているという。「参加したくない」は12.3ポイント上昇しているのだ。
年代別で、「参加したくない」意向に目をむけて調査結果を見ると、20代・30代はともに「56%」(「コロナ以前と変わらず参加したくないと思う」と「コロナ以前より参加したくないと思う」)だったのに対して、40代では「70%」(同)、50代では「69%」(同)、60代では「72%」という割合を占めている。
このように、年齢の高いミドル層とシニア層がコロナ明けの祭りをネガティブにとらえているようだ。
そこで、「コロナ明けの祭りに関して、あなたがもっとも懸念していることは何ですか?」と聞いたところ、最多は「懸念していることはない」が「36%」だったものの、「感染リスクがまだ残っている」が「32%」、「人ごみに慣れていないため不安」が「16%」、「祭りの規模縮小や質の低下」が「6%」、「安全対策が行き届いてなさそうで不安」が「5%」という順番になった。衛生面や安全面で不安を抱えている人が少なからずいるようだ。
こうした調査結果に対して、マツリズム代表理事の大原学氏は、お祭り開催を支援している立場から以下のように指摘している。
「インバウンド需要も戻り外国人の姿も多く、『コロナ前よりも祭りを見に来る人が増えている』と、地元の方々から聞くこともあります。
しかし一方で、祭りの担い手や参加者はコロナ前に比べて少なくなっていることが多く、町会単位で神輿や山車を出すのを止めたり、ルートを短縮するなど規模を縮小したり、神輿を台車に載せて運ぶ光景も見られるようになりました。
さらに、少なくなった人員で観光客や警備の対応をしなければならないため、祭りの担い手の負担はますます増えていると感じます」
「多くの祭りが再開される今年は、さまざまな地域で分岐点を迎え、『祭とは何か?』を改めて問い直す一年になると思います」