どんな習慣を身につけるかで、仕事に大きな差が出る!

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   人に能力の差はなく、あるのは習慣の差だけである――。

   「肯定的思考」と「ほんの少しの努力」という2つの習慣を身につけるだけで人生は変わると、本書「仕事ができる人になる思考習慣」(大和書房)は提案する。どんな習慣が大切なのだろう?

「仕事ができる人になる思考習慣」(吉井雅之)大和書房

   著者の吉井雅之さんは、有限会社シンプルタスク代表取締役。習慣形成コンサルタント。自己実現のための習慣形成連続講座「喜働力塾」を全国で延べ84期実施、卒業生は4000人以上に上る。著書に「成功する社長が身につけている52の習慣」などがある。

「脳の性質」を利用して、習慣化する

   最初に説いているのは、今の自分をつくったのは「能力」ではなく、「習慣」だということだ。そして、「脳の性質」を利用して、習慣化すればいいという。

   私たちの脳はマイナスの情報を探すクセがあり、過去の嫌な体験を思い出すことで、新たな行動に踏み出せなくなる。脳はそもそも「新たなチャレンジ」に対して、恐怖を感じる性質があるという。

   脳は勝手に「変化=危機」ととらえるため、新たな考えや行動に対してブレーキをかけようとするからだ。そのため、脳に危機を感じさせない程度の「小さな一歩」から習慣を積み重ねることを勧めている。

   「発する言葉が脳に影響を与える」という指摘は、多くの自己啓発書に登場する、ポジティブ思考、ネガティブ思考と共通するものだ。ネガティブな言葉を使うのをやめ、ポジティブな言葉を発することを習慣化することで、思考と行動を変えられるという。

   「自分の機嫌は自分で取る」という言葉にも納得した。

   言葉だけでなく、ポジティブな「動作」や「表情」を意識的に行うことでも、脳はプラス思考になるという。ガッツポーズなどの「決めのポーズ」が自分の元気をつくり出すという記述で思い出したのは、卓球やテニスで選手が要所で大きな掛け声を出すことだ。そうすることで、「絶好調」のイメージが脳に強く条件づけられるのだろう。

   2つ目に「なるほど」と思ったのは、「完璧主義」の弊害だ。人間は完璧な状態を追い求めると、「リスクに備えないと」「あの対策をしておかないと」などと考えて、なかなか動き出せなくなってしまう。

   仕事を含め、あらゆるものごとは過度に完璧を求めるよりも、「まずはやってみる」ことで、次の課題や改善策が見えてくるという。完璧にこだわらず、小さな「失敗→改善」を積み重ねて成長のスピードと質を高める方が大切だというのだ。

「習慣化」のコツとは

   第2章では、誰にでもできる「習慣化」のコツについて説明している。本書のキモの部分なので、ポイントを箇条書きで挙げてみよう。

1 まずは「小さな習慣」からはじめよう
2 習慣をはじめることで自分の「本性」が見えてくる
3 「いつ・どこで」という仕組みをつくる
4 「他人を巻き込む」ことで継続につなげる
5 「三日坊主」は次へのステップ
6 「1つ前の習慣」も決めてしまう
7 「早起き」という習慣は、もっとも重要な習慣

   第3章「『仕事力』を伸ばす思考習慣」以降の各章も、ビジネスパーソンにとって参考になるだろう。いくつか要点を抜粋しよう。

〇「書く」習慣で頭と仕事を整理する

   常に「メモをとる」「書き出す」習慣を大切にする。「書き出す」習慣は、記憶を強化するだけでなく、頭を整理して作業を効率化する効果もある。

〇ビジネスは「体」と「心」が基本

   「どうすることが最適か、自分の中に基準をもつ」ことが大切。体のことも考えながら「少々の無理はする」、しかし、「無茶は極力避ける」といった基準を設ける。無理をしたと思ったら、仕事の進め方を改善する。

〇考える力を鍛える

   わからないことであるほど、一度、自分で考えてみるという習慣が脳を鍛えてくれる。わからないことがあってもすぐに検索したり、人に聞いたりせず、まずは自分で考える習慣をつける。時には考えるのを休む時間も必要だ。

〇デスクを整理してノイズを減らす

   「仕事ができる人」や「仕事が早い人」に共通する特徴は、整理整頓がうまい、というよりも、そもそも「所有物が少ない」ことだ。視覚に入る情報が少ないため、シンプルに「やるべきこと」に集中できる。

付き合うべき人、そうでない人とは?

   もう少し続けてみよう。

〇自分をポジティブにしてくれる人とつき合う

   成長するには自分より優秀な人とつき合うべきだ。ネガティブな人とのつき合いは、極力避けるべきだ。マイナスの感情や負のエネルギーは、多くの人を簡単に巻き込んでしまう。

〇マイルールを決めて自己管理する

   「何気なく生きない」ことを意識する。無意識でいると、環境や他人に依存してしまいがち。無意識に流されないように「自分軸」をつくるとともに、自分の習慣を変える努力をコツコツと続ける。

〇セルフイメージを向上させる

   セルフイメージは、身だしなみにも表われる。いつも「どう見られているか」を意識する。将来、「なりたい自分」を基準にして身につけるものを選ぶ。

〇夢の実現までのロードマップを書く

   どんな些細なことでもいいので、毎日のスケジュールに自分の「夢に向かっての作業」を1つ書き込み、実行したら赤ペンで線を引いて消す。やってきたことが可視化され、モチベーションも上がる。

   自己啓発本にありがちな精神論はあまり感じられず、「習慣」という誰もが行う日々の行動の積み重ねに着目し、実践的にまとめたのが、本書の特長だろう。

   著者は全国で指導にあたり、実績を上げているようだ。(渡辺淳悦)

「仕事ができる人になる思考習慣」
吉井雅之著
大和書房
1650円(税込)

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