団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年。いま、子どもが介護を支える「ヤングケアラー」とともに問題となっているのが、働きながら介護との両立をはかる「ビジネスケアラー」だ。企業としても悩ましい問題となっている。
こうしたなか、オーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営するイチロウ(東京都渋谷区)は、2023年6月28日に、都市圏に住む35歳から60代を対象におこなった「介護と仕事の両立に関する意識調査」を発表した。
仕事と介護を両立している人を対象としたこの調査によると、割合として多かったのは、働き世代にあたる40代に限ってみれば、「週2日以上の介護」という人が58.0%、「1日2~3時間介護に費やす」人が24%で最も多い、という傾向がわかった。
また、介護と仕事を両立するために、仕事に制約を設けた40代の人は51.0%、内容は「時短勤務」、「異動不可により昇進を断念」、「雇用形態変更」などが挙がった。
「団塊の世代」の親の介護、担い手は「団塊ジュニア世代」に
2025年には、約800万人いる「団塊の世代」が75歳以上の「後期高齢者」になる。すなわち、国民の6人に1人が後期高齢者になるのだ。この超高齢社会の到来は、「2025年問題」と呼ばれている。
それにともない、親の介護が必要となるケースがある。担い手は、「団塊の世代」の子ども世代にあたる、1971~1974年生まれのいわゆる「団塊ジュニア世代」となる。2023年時点で、49~52歳にあたる。働き盛り世代でもあるだけに、働きながら介護との両立をはかる「ビジネスケアラー」は、企業としてもさまざまなサポートが必要になるだろう。
そうしたなか、「ビジネスケアラー」の実情を聞いたこの調査は、介護と仕事を両立する、都市圏に住む35歳から69歳の男女400人を対象に、インターネットアンケートを実施した。なお、居住地は北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県。実施期間は2023年6月8日から6月9日まで。
調査では、30代から60代までの介護と仕事を両立させている400人に「週何回程度介護しているか」を聞くと、30代は「週2~3日」が「18.0%」、「週4~5日」が「24.0%」、「毎日」が「17.0%」で2日以上介護を務めているのはあわせて「59.0%」となった。
また、40代では「週2~3日」が「23.0%」、「週4~5日」が「13.0%」、「毎日」が「22.0%」で2日以上介護を務めているのはあわせて「58.0%」となった。
つぎに、1日当たりどのくらいの時間を当てているかを聞いた。30代で最も多い回答は「2時間以上3時間未満」で「31.0%」、次いで「5時間以上」が「21.0%」という結果がわかった。
一方で、40代と50代の最多回答は「1時間以上2時間未満」が突出した。60代では「1時間未満」となった。時間だけに限ってみれば、30代の負担の大きさが浮き彫りになったかたちだ。
続いて、「介護との両立をするうえで、仕事上の制約を設けたことがあるか」と質問した。全体では「はい」が「52%」、「いいえ」が「48.0%」。30代では、「はい」が「61.0%」、「いいえ」が「39.0%」となった。
具体的に、どのような制約を設けたかを聞いてみると、各世代で多かったのは「時短勤務」だった。30代で「50.8%」、40代で「43.1%」、50代で「40.8%」、60代で「48.9%」だった。
一方で、30代や40代で目立ったのは「異動不可による昇進の断念」が30代で「32.8%」、40代で「37.3%」となった。
また、30代・40代の結果を見ると、約4人に1人が「正社員から契約社員やアルバイト・パートへの雇用形態変更」や「管理職への昇進断念」をしているという。
介護と仕事の両立が難しい理由「プライベートな時間が取れない」「体に負担」「常に介護のことが頭にあるストレス」
さらに調査ではもう一歩踏み込んで、「介護と仕事の両立が難しいと感じたことがあるか」を聞いた。全体では「とても難しいと感じる」が「44.8%」で、「やや難しいと感じる」は「41.3%」となり、あわせて「86.1%」の人が難しいと感じている現実がわかる。
なかでも30代では、「とても難しいと感じる」が「49.0%」、「やや難しいと感じる」が「42.0%」で、あわせて「91.0%」となった。
最後に、「仕事と介護の両立が難しいと感じる理由」を聞いている。目立ったのは、30代は「勤務時間や終業時間の調整が難しい」(44.0%)、40代は「両立によりプライベートの時間が取れない」(41.5%)、50代は「常に介護のことが頭にあり、ストレスが蓄積される」(38.6%)、60代は「介護の長期化を考慮すると、財政面での不安がある」(38.6%)で、これらが上位を占めた。
こうした調査結果に対して、イチロウの代表取締役である水野友喜氏は、以下のように総括している。
「今年(2023年)の3月に経済産業省の発表により、ビジネスケアラーという言葉が使われ、介護離職には至らないまでも仕事と介護の両立をする人たちが大勢いること、仕事上で様々な制約を受けていることが浮き彫りになりました。少しずつ介護というものが『家の問題』から『社会の問題』として本格的に移行して来ていることを実感しています」
「介護をする家族が仕事やプライベートを犠牲にすることなく在宅介護を続けることができ、それが要介護者本人の幸せにつながることを願いながら、今後もイチロウは介護保険外サービスという立場から介護に関わる人々を支えていきたいと思っています」