転職経験者はよく知ることだが、転職活動でエントリーするために必要なレジュメ(履歴書や職務経歴書)を書くのはとにかく大変だ。それを、AIが「自動作成」するというから朗報だ!
株式会社ビズリーチは2023年7月6日、転職サイト「ビズリーチ」に生成AI(GPTモデル)を利用したレジュメの「自動作成機能」を実装したと記者会見で発表した。
会見には同社社長の酒井哲也氏とCSOの枝廣憲氏が登壇して、そのメリットをアピールした。さらに、同機能の効果を実証する実験を行った東京大学経済学部教授の小島武仁氏が登場し、枝廣氏とトークセッションを行った。
会見でのキーワードは、転職希望者が自らの経歴をまとめ、転職支援会社に提出する「レジュメ」だ。レジュメは、転職支援会社のサービスを利用する企業側への絶好のアピールの手段ではあるものの、その作成にはたくさんの時間がかかってしまうなど、転職希望者の大きな悩みとなっている。
今回実装された「自動作成機能」があれば、効率的なレジュメ作成ができ、転職活動中の求職者の悩みを解決してくれる。
自動作成機能を使ったレジュメは、スカウトの受信数が40%多かった!
会見で枝廣氏は、同機能を実際に使用してレジュメを作成する様子を披露した。自身が手にするスマホで実演すべく、同サイトのレジュメ作成画面に、これまでに経験した職種など必要事項を入力。すると、職務要約や職務経歴がスマホの画面に表示されている様子が会見場のディスプレイに映し出された。
枝廣氏は、「転職サイトに登録する際のネックとなるレジュメ作成の煩雑さを省略できる」と説明。そのうえで、「タイピングによる文字入力は、速い人でも1分で200文字が限界と言われています。しかし、自動作成機能を使えば最速30秒程度で350文字の職務要約が完成します」と、その有用性をアピールした。
そのあとに開かれたトークセッションに登場したのが、小島氏だった。小島氏は、同機能で作成されたレジュメが、これを使用しないで作成されたレジュメに対して優位性があることを証明するための実験を2種類行ったと説明した。
1つ目の実験では、ビズリーチ会員を対象に、自動作成機能を使ってレジュメを使ったグループとそうでないグループを対照させたABテストをおこなった。その結果、自動作成機能を使ったグループはそうでないグループに対して、スカウトの受信数が40%多かったことがわかったという。
2つ目の実験は、両グループのレジュメを、同社のキャリアコンサルタントにAI使用の事実を伏せつつランダムに見せ、同社規定の19項?の評価基準を用いて採点するというものだった。その結果、自動作成機能を使ったレジュメは、そうでないものに対して低評価が少ない――。そんなこともわかり、個人の文章力に左右されずに、完成度の高いレジュメになることがわかったという。
可能性が広がると迷ってしまう!?
トークセッションが終わると、酒井氏を加えて質疑応答のコーナーが始まった。この中では前述の、自動作成機能を使ったレジュメのグループの方が、スカウトの受信数が40%高かったという実験結果が出た件について、「そこに弊害はないか」とする意外な質問が飛んだ。
具体的には、選択肢が増えることによって内定の獲得数が増え、その結果、転職希望者がどの企業に転職するか迷ってしまうという可能性。また、採用側からの視点として内定承諾率が下がってしまうのではないか。ひいては、転職成立の件数を減らしかねないのではないか、というものだった。
これに対し、酒井氏は入社を決断する際のフォローは当然必要だと説明した。そのうえで、「たくさん選択肢があるというのはポジティブなことだと思う」としつつ、「選択肢が増えることは転職希望者が自身の新たな可能性に出会う可能性を増やすのではないか」と述べた。
会見の第2部では同社のCMに出演する「ビズリーチ姉さん」の異名を持つ俳優の吉谷彩子さん(31)が登場。2016年から出演する同社のCMへの思いを語った。(J-CAST 会社ウォッチ編集部 坂下朋永)