新しく人員の入った部署ではそろそろ、新入社員が活躍を始めていることかもしれない。先輩社員としては元気に長く活躍してほしいところだが、いまの新入社員はどんな意識をもっているのだろう?
そんななか、企業における経営・人事課題の解決などを支援するリクルートマネジメントソリューションズ(東京都港区)は2023年6月29日に「新入社員意識調査2023」の分析結果(調査1、調査2)を発表した。
同調査では「働きたい職場の特長」や「働くうえで大切にしたいこと」、「上司に期待すること」など多岐にわたる質問で新入社員の意識に迫った。なかでも、働きたい職場は「お互いの個性を尊重する」が50.7%で10年前と比較すると21.8ポイントも高い過去最高、「現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかといえばこだわらない」が57.4%に達するなど、「個」を尊重する世代という特徴があるようだ。
同社の総括では相互に理解し合った「共通目的」と自分を率いていく「セルフリーダーシップ」を新入社員と築いていくことで、新入社員育成を成功させる秘訣を説いている。
新入社員の働きたい職場、10年前と比べて...「お互いに助け合う」13.4ポイント増 一方で「アットホーム」6.9ポイント減の37.3%は過去最低
「新入社員意識調査2023調査1」は2023年3月から4月まで、同社の公開型新入社員導入研修の受講者509人が対象。属性は平均年齢22.5歳で、最終学歴は大卒以上が82.9%、300人未満企業比率は67.0%となった。
また、「新入社員意識調査2023調査2」は2023年2月から4月までの間、同社の新入社員導入研修およびWEB学習プログラムを受講した1840人が対象。属性として300人未満企業比率は8.1%となっている。
今年の新入社員の意識・特徴を把握するためにおこなわれた今回の調査。はじめに、新入社員たちに「働きたい職場の特長」を聞いた。
最多は「お互いに助け合う」が昨年に続いてトップで「66.4%」を占めた。10年間の比較を見ると、13.4ポイント増の大幅な上昇となった。
続いて、「お互いに個性を尊重する」が「50.7%」となった。これは10年間の比較で21.8ポイントの急上昇で、過去最多の数字を記録した。2010年調査以来で最高の数値となる。
「お互いに助けあう」「お互いに個性を尊重する」が、他の選択肢よりも選択率が高い結果となっていることについて同社は、
「『個』が守られた中で、互いに協力しあうような繋がりを求めている傾向がある。個性を尊重することで能力を伸ばす教育方針の影響や、SNSの発展により自己表現が強化されることにより、自己への意識が高まっていると考えられる」
と解説している。
一方で、大きく数値を下げたのが「アットホーム」な職場(37.3%、過去10年間の比較で6.9ポイント減少)、「活気がある」(25.3%、過去10年間の比較で19.2ポイント減少)、「互いに鍛え合う」(11.4%、過去10年間の比較で13.4ポイント減少)という結果が出た。
また、「アットホーム」「皆がひとつの目標を共有している」という若手世代でも受け入れられそうな項目も近年選択率が減少傾向となっている。
「背景として、個性を持つことが当たり前の時代で育っているため、組織のカラーに自分が合わせていくという発想自体が薄くなっている可能性が高い。大学時代がコロナ対策期間だったため、就活もオンライン中心の世代でもあり、職場というもののイメージがつきにくいということも考えられる」(リクルートマネジメントソリューションズ)
続いての質問では、「働くうえで大切にしたいこと」を聞いた。「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が昨年に続きトップで「48.5%」となった。10年間の比較では、9.4ポイントの上昇となり、現代の若者の働く意識が表れる結果となった。
次いで、「任された仕事を確実に進めること」が「38.9%」で昨年比3.3ポイントの上昇。「新しい発想や行動で、職場に刺激を与えること」が「13.8%」が過去最高となり、昨年比では3.7ポイントの上昇となった。
しかし、一方で「何事も率先して真剣に取り組むこと」は「13.8%」となり、過去最低。この10年の変化を見ても8.4ポイントの下降と大幅に減少した。
こうした新入社員の仕事に対する意識の変化について同社では、
「『自律』を苦手とする若手層の特徴を反映している結果となった。
社会の流れとして、消費者へのパワーシフトや教育の変化などにより、自発的に行動していく経験が積みにくい。
さらに、学生時代の数年をコロナ対策のさなかに過ごしていた世代でもあるため、行動による成功体験も積み切れていない傾向もある」
と説明している。
上司に求めること、10年前と比べて...「リーダーシップ」9.2ポイント減、「厳しく指導」20.6ポイント減 「耳を傾け」「丁寧に指導」してくれる上司を求む
一方、上司に期待することは何か――。これについては、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が昨年に続きトップの「49.5%」となった。昨年比では4.6ポイントの減少となるが、10年間の比較では3.1ポイントの上昇となっている。
また、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が10年間の比較で16.3ポイントと急上昇し、「49.1%」で過去最高となった。
また、ポイントが減少した項目をチェックすると、「仕事に情熱を持って取り組むこと」が「19.6%」で、これは10年間の比較で15.3ポイント減少して、過去最低となった。
さらに特徴的なのは、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」が10年間の比較で20.6ポイント大きく減少し、「17.5%」となり過去最低になっている。
厳しい上司は好まれなくなっているようにも見えるが、同社では、
「上司に対しても、個性を尊重するコミュニケーションを求めている。
社会全体のハラスメント意識の強まりなどにより、厳しく叱られる経験も減少し、厳しいフィードバックへの苦手意識がさらに高まっている。
新入社員は、相手に心を許すまで一定の距離を置く傾向もあるため、"情熱"という強いワードが入る項目の選択率が下がった可能性が高い」
とした。
次の質問では「新入社員時代に身に着けること」を聞いた。最多から順に「社会人としての基本行動」が「38.9%」、「仕事に向かう姿勢・スタンス」が「23.7%」、「社会人としてのビジネスマナーや規律」が「10.8%」、「セルフコントロール力」は「8.0%」、「業務に必要な専門知識やスキル」は「6.1%」。今回、最も少なかったのは「会社の価値難に沿った行動」で「0.9%」という結果になった。
同社では
「新入社員時代にスタンスやマナーよりも、報告・連絡・相談、PDCAなどの基礎行動を身につけるべきことと答えた割合が最も高かった。
これは、How Toのような具体的インプットの方が、仕事に直接的に役立ち、効率的だと思っている傾向の現れだと推測する。
『会社の理念や価値観に沿った行動』の組織適応への選択率は1%を切る結果となった。『個』の意識が高まる中、組織への帰属意識・欲求自体が低下している可能性が考えられる」
と分析している。
最後に、就職先での勤続意向を聞いた。すると結果は、「現在の会社で勤め続けることにこだわらない」が「23.4%」、「どちらかと言えばこだわらない」が「34.0%」で、あわせて「57.4%」となった。
一方で、「定年まで現在の会社で勤めたい」(13.8%)、「どちらかと言えば勤めたい」(19.4%)をあわせた「33.2%」となった。現在の会社に勤め続けることにこだわらない新入社員のほうが24.2ポイント上回った。
こうした傾向のある新入社員との接し方について同社は、以下のようにまとめている。
「新入社員とともに協働していくポイントは、『共通目的』と『セルフリーダーシップ』です。
前者は、トップダウンで一方的に降りてくるものではなく、双方向でのやり取りの中で、共に意味付けをしていくものです。
協働者の間で意味付けされた共通の目的を置くことによって、多様な『個』が持つ"違い"は、物事をよりよくする一つの観点になり、プラスの要素に転換します。
後者は、自分自身に対して発揮するリーダーシップを指します。VUCA環境下でも「個」を生かし活躍するため、若手層に自分起点で動くことで、よりよい状況を自らつくっていく力を身に着けてもらうことが重要となります」