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ヤマハ発動機、スノーモービルから撤退...ホンダ、スズキなどに続き、日本メーカーは姿消す

   ヤマハ発動機が、スノーモービル事業から撤退する。2023年6月28日発表した。かつてスノーモービルは国内でホンダ、スズキ、カワサキも開発・生産していたが、ヤマハ発の撤退で日本メーカーは姿を消すことになる。

  • ヤマハ発動機のスノーモービル(同社ウェブサイトより)
    ヤマハ発動機のスノーモービル(同社ウェブサイトより)
  • ヤマハ発動機のスノーモービル(同社ウェブサイトより)

大型バイクの開発ノウハウを生かせるスノーモービル 世界的にも限られた市場で「事業継続は困難」

   スノーモービルは雪上のオートバイのような乗り物だ。前輪に当たる部分が2本のソリで、駆動輪となる後輪部分はキャタピラとなる。

   大型バイクの開発ノウハウが生かせるため、国内ではヤマハ発はじめオートバイ4メーカーの得意分野だった。

   ところが日本はもとより、世界的にも北米や欧州など市場が限られ、「持続的な事業継続は困難との判断に至った」という。

   日本でスノーモービルはスキー場などで見かける「レジャー用雪上バイク」のイメージが強い。しかし、ヤマハ発によると「スノーモービルは国内外で施設の巡回、物資輸送、救難・救護、農業、漁業、森林保全などの業務を中心に、幅広い用途で使用されている」という。

   たとえば、日本国内でも北海道をはじめとする北国のスキー場で、遭難者の捜索などに使われている。過酷な条件で使用されるため「圧雪路だけでなく、未整備の深雪など多様な環境を走行できる性能を備えている。さらに実用性と快適性を考慮し、さまざまな機能を備えている」(ヤマハ発)という。

   スノーモービルは命にかかわる乗り物だけに、単なるレジャー用では済まないことがわかる。

環境規制の強化で自動車・バイクから消えた2ストエンジン、スノーモービルでは生き残っていた

   現在、ヤマハ発が国内で販売しているスノーモービルは、2機種ある。エンジンは空冷2ストローク直列2気筒の535ccと、水冷4ストローク直列3気筒1049ccのモデルだ。

   最高出力などはわからないが、排気量はそれぞれ大型バイクと1リッターカーの大きさだ。環境規制の強化で自動車とバイクから2ストロークエンジンが消えて久しいが、スノーモービルでは生き残っていることに、懐かしさを感じる読者も多いことだろう。

   筆者のように、1980年代の2ストバイクの全盛時代を知る世代であれば、4ストより2ストのスノーモービルに乗ってみたいと思うのではないか。ヤマハ発の2ストエンジンであれば、なおさらだ。

   ヤマハ発はこの2ストロークエンジンについて「粘り強くて扱いやすく、日々の業務や生活の中でハードに使えるタフさが特長」と説明している。

   2ストモデル、4ストモデルともタンデム(前後の縦並び)の2人乗りだが、リバースギヤ(後退のための変速機)がある点がバイクとは異なる。4ストモデルはベンチレーテッドディスクブレーキを備えた本格派で、バイクメーカーらしくタコメーターもある。

   メーカー希望小売価格は2ストモデルが118万5800円、4ストモデルが157万8500円となっている。しかし、残念なことにすでに生産を終了しており、在庫のみの販売という。

スバルも2017年に撤退... モビリティーの多用性が失われ寂しさ

   スノーモービルをめぐっては、かつてSUBARU(スバル)がスノーモービルやオフロードカー用に2ストローク800ccなどの「高性能車載用エンジン」を生産し、海外メーカーなどに供給していた。

   残念ながら、スバルは2017年に「中核の自動車事業へ経営資源を集中させ、スバルブランドを徹底的に磨く」として、同エンジンの生産・販売を終了している。

   今回のヤマハ発もスノーモービルから撤退することで「今後は既存事業や新たな成長事業へと経営資源を集中させる」という。

   経営判断としてやむを得ないのかもしれないが、クルマ・バイク好きとしては乗り物(モビリティー)の多用性が失われるのは寂しい。(ジャーナリスト 岩城諒)