市場回復のキーポイントは「人手不足解消」 需要の取りこぼしで、業績回復ペースの伸び悩みには懸念
4月時点までの各社業績推移をもとにした2022年度通期の旅館・ホテル市場(事業者売上高ベース)は、前年度から18.8%増の3.4兆円に達した。
21年度の2兆8509億円(前年比0.5%増)に続き、2年連続で前年度を上回ったという。 過去最高だった2018年の約5.2兆円から約6割程度の水準にとどまっているが、前年度比40%超減という例のない落ち込みを記録した2020年度(2兆8360億円)を底に回復基調で推移している。
同社では、「引き続き現状の回復ペースが続けば、23年度の旅館・ホテル市場はコロナ禍前並みの4~5兆円前後に到達する可能性がある」と予測している。
また、今後の懸案事項としてあるのが、「人手不足」による稼働率低下だ。同社の別の調査(2023年5月2日発表)では、旅館・ホテル業界の人手不足割合は正社員で「75.5%」、非正規社員で「78.0%」となっている。
そのため同社は「フロントスタッフや配膳、清掃など各業務で人手不足が深刻化している一方、コロナ禍で他業種へ移った従業員は『賃金など条件が折り合わず、宿泊業への戻りは鈍い』(人材派遣会社)など、フル稼働に必要な人材の確保が難航している」と指摘している。
今後の見通しについて、同社では、
「足元では人手不足で予約の制限や客室稼働の抑制といった措置を迫られた企業も一部で出始めるなか、インバウンドの受け入れ態勢が整わず、需要の取りこぼしなどで業績回復ペースが想定より伸び悩む可能性がある」
としている。