「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋の株価が2023年6月27日の東京株式市場で一時、前日終値比350円(6.4%)高の5810円まで上昇し、年初来高値を更新した。
前日に23年3~5月期(第1四半期)連結決算を発表、純利益が前年同期比2倍の8億8100万円に達するなど好調なその決算内容を投資家が好感した。
23年第1四半期決算...経常利益86.8%増の13億2300万円 値上げによる客離れは杞憂に
それでは第1四半期決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比14.2%増の128億9400万円、営業利益は2.4倍の12億5800万円、経常利益は86.8%増の13億2300万円だった。年間計画の進捗率は営業利益が29.2%、純利益は30.6%に及んだ。
利益が増えたのは、2023年2月期にベースのカレーソースと一部のトッピングについて2回実施した値上げの効果だ。原材料高や物流費高を転嫁する必要があるとはいえ、株式市場では一時、客離れも懸念されたが、杞憂に終わったようだ。
外食業界全体として、値上げが浸透しつつあることも壱番屋には追い風だった可能性がある。今回の第1四半期についてみると、既存店売上高は前年同期比13.3%増で、既存店の客数は1.3%増、客単価は11.8%増だった。客離れを起こさずに、客単価が上昇したことを示していると言える。
円安や原材料高も続き、さらなる値上げ迫られる可能性...それでも客は離れないか?
新型コロナが5月に5類に移行して「ウィズコロナ」がより進んで外食需要を押し上げていることも、壱番屋の業績改善を後押ししている。特に、日本のカレーは訪日外国人にも人気があるだけに、盛り返しているインバウンド需要も取り込めているようだ。
壱番屋はパスタなどカレーライス以外の店舗を含めて5月末現在、国内に1252店、海外に208店の計1460店を展開する。海外ではタイが51店で最多、中国43店、韓国32店が続き、アジアを中心に出店している。「本場」のインドにも2店出している。
最近ではそうした海外店舗のメニューを「逆輸入」して提供する店も始めた。
東京と名古屋に計2店舗開業しており、中国やタイで出しているカレーソースを使い、内装も海外店舗を意識した作りにしてココイチファンの人気を集めている。
足元の業績は好調だが、円安や原材料高も続いており、特に国内事業で高い利益の持続性があるかどうかを心配する見方も出始めている。
さらなる値上げも検討課題になる可能性があるが、顧客が値上げにどこまで耐えられるか不透明ななか、難しい舵取りを迫られる局面もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)