売り上げの82%がエネルギーのENEOSホールディングス。ガソリン販売で国内シェア5割、全国に製油所を保有する巨大石油精製元売り企業だ。
そのENEOSは、水素製造から水素ステーションまで、水素サプライチェーンの構築に注力。再生可能エネルギー事業の拡大に向けて、大きく舵を切ろうとしている。
本業とのシナジー薄い金属事業を切り離し
いまや世界を挙げて「脱炭素社会」の実現を目指しているのは、周知のとおり。石油事業に強烈な逆風が吹くなか、ENEOSホールディングスは事業の構造転換を進めている。
2021年11月26日、英国の北海油田からの撤退を発表。22年1月11日には、約1900億円を投じて、再生エネルギー専業のジャパン・リニューアルエナジーを買収した。
そして、今年(23年)5月11日には、ENEOSの100%子会社のJX金属の上場準備を発表。経営基盤を強化するため、本業とのシナジーが薄い金属事業を切り離し、資金確保。その資金で、脱炭素時代に向けて成長投資を拡大していこうというわけだ。
同日の2023年3月期決算とともに発表された「ENEOSグループ『第3次中期経営計画(2023~25年度)』の策定について」によると、
「脱炭素・循環型社会に向けた変化の速度は、一層加速しています。特に『エネルギートランジション』への課題を如何に解決していくかが重要なテーマと認識しています。
かかる環境の下、ENEOSグループが将来にわたり社会に必要とされる企業であり続けるために、『エネルギー・素材の安定供給』と『カーボンニュートラル社会の実現』との両立に向け挑戦します」
と、新たな長期ビジョンを示している。
この長期ビジョンは、エネルギー・素材の安定的な提供という「今」の責任を果たしながら、トランジションを通じて「将来」もその責任を果たし続けていくことで、「脱炭素社会」の実現に貢献し、ENEOSグループの企業価値の最大化を図ろうという思いが込められているようだ。