東京23区にある大学の定員が増えるという。政府が規制を一部緩和もので、2024年度から情報系学部・学科の理工学系分野に限って、増員が認められる。不足が叫ばれるデジタル人材の育成が目的だが、「東京一極集中の是正はどうなった」との声も聞こえる。
定員増の対象を理工学系分野 他学部の定員縮小を含む計画提出求める、達成できなければペナルティー
岸田文雄政権が重要政策と位置付ける、デジタルトランスフォーメーション(DX)。政府は、DXを担う人工知能(AI)やデータサイエンスに精通した人材が不足しているとして、大学が集中する23区での人材育成が不可欠と判断したかっこうだ。
そこで、23年2月、デジタル分野に限り特例で定員増認めることにし、時期や条件を検討していた。これを受け6月9日、内閣府と文部科学省が具体策をまとめ、関係の府省令を交付した。
2021年時点で23区内にある大学の学部の入学定員は計約12万2000人と、全国の2割が集中する。政府は18年、地域大学振興法を制定し、東京一極集中を是正して地方での進学を促すため、23区にある大学の定員増を28年3月末まで原則禁止する措置を取ったばかりで、5年での方針転換になる。
具体的には、定員増の対象を理工学系分野に限定し、7年後に元に戻すことを条件にする。そのため、他学部の定員縮小を含む計画提出を大学に求め、達成できなければペナルティーを科す。また、学生に地方企業でのインターンシップ参加を促すなど、地方での就職につながる取り組みを要請。サテライトキャンパスを設置するなど、地方大学のデジタル人材育成に協力することも求めた。
背景にあるデジタル人材の不足について、経済産業省は、2030年に約55万人の「先端IT人材」が不足すると試算している。
文部科学省は「23区内も含めてオールジャパンで取り組まなければ(人材育成が)追いつかない」と危機感を示す。同省は、デジタル人材育成のため、学部を再編する私立・公立大などを支援する3000億円規模の基金も創設している。